大学入試には、いくつかの入試方式があります。指定校推薦もその一つです。
子どもから指定校推薦で大学に行きたいと言われたとき、親として、「それって子どものためになるの?本当にその進学でいいの?」と思うことがあるかもしれません。
親としては、指定校推薦について正しい知識を得て、子どもがベストの選択ができるように支援したいものです。
この記事では、指定校推薦のメリット・デメリット、指定校推薦に向いている人について説明します。
指定校推薦とは
指定校推薦とは、大学の推薦入試の方法の一つです。
推薦入試には次の二種類あり、
- 学校推薦型
- 総合型選抜(AO入試)
そして、学校推薦型には次の二種類の推薦方式があります。
- 公募型推薦入試
- 指定校推薦入試
つまり、いわゆる指定校推薦は、学校推薦型の指定校推薦入試のことです。
指定校推薦は、大学が指定する高校の生徒のみが受験できる入試方式です。
指定校推薦では、大学が高校の進学実績や成績などを総合的に判断して指定校を決定し、その指定校に一定の推薦枠を配分します。高校は、その枠内で、その大学に対して進学を希望する生徒の推薦を行います。
指定校推薦は一般入試やAO入試に比べて合格率が高いとされていますが、専願のため他大学を受験できないなどのデメリットもあるため、選択肢の一つとして慎重に判断する必要があります。
指定校推薦のメリット
指定校推薦で大学受験をするメリットには次のようなものがあります。
- 指定校推薦は合格の可能性が高い
- 早い時期に合格(進学先)が決まる
- 自分の学力以上の大学に進学できる可能性がある
指定校推薦は合格の可能性が高い
指定校推薦のメリットとして合格の可能性が高いことがあります。合格の可能性が高いというか、ほぼ100%合格できます。
指定校推薦の合格率が高いのは次のような理由によります。大学側から高校に一定の推薦枠を割り当てていて、高校がその枠内で、その大学に進学するのにふさわしい生徒を推薦することになります。そうすると、高校と大学の信頼関係に基づいて、ほぼ確実に合格するようになっています。
合格の可能性が高い受験は、受験生にとって最大のメリットですしね。親としても安心材料ではないでしょうか。
早い時期に合格が決まる
指定校推薦の2つ目のメリットは、合格が決まる時期が早いことです。
指定校推薦の時期は大学により若干異なりますが、具体的には概ね次のようなスケジュールになります。
- 指定校推薦の募集の公開 6月〜8月
- 校内選考
- 推薦される生徒の決定 10月頃
- 指定校推薦の出願 10月〜11月頃
- 試験 11月頃
- 合格発表 12月頃
このように指定校推薦で受験すると、年が明ける前に進学する大学が決定します。年が明けるとすぐに共通テストがあり、大学の受験シーズンに入りますが、その頃には受験が終わっているということです。
受験生にとっても家族にとっても負担が少なくなります。
自分の学力以上の大学に合格する可能性がある
指定校推薦の3つ目のメリットは、自分の学力以上の大学に合格する可能性があることです。
指定校推薦は、大学がその高校の進学実績や成績を総合的に判断して指定校を決定し、高校の先生や学校がその指定校に対して進学を希望する生徒の推薦を行います。また、試験でも、面接や小論文が中心で学力テストは課されません。
学力的に一般入試では合格が難しい大学でも、校内で選考されれば、学力以上の大学に入学することができます。
学校に一般入試では難しそうな大学から指定校推薦枠があれば、チャレンジしてみてもいいかもしれません。
指定校推薦のデメリット
指定校推薦のデメリットには次のようなものがあります。
- 志望校、志望学部の推薦があるとは限らない
- 専願のため他大学を受験できず合格したら入学しなければならない
- 指定校推薦の校内選考の競争率が高い
- 国公立大学は指定校推薦を実施していない
志望校、志望学部の推薦があるとは限らない
指定校推薦のデメリットとして、志望校、志望学部の推薦があるとは限らないことが挙げられます。
大学が指定した高校に通っていれば受験資格が得られる可能性がある指定校推薦であっても、志望する大学や学部から高校に推薦枠が無いと、指定校推薦で受験することができません。この場合は、志望校を他の方法で受験するしかありません。
専願のため他大学を受験できず合格したら辞退できない
指定校推薦のデメリットとして、専願のため他大学を受験できないこと、そして合格したら必ず入学しなければならないことがあります。
もし、第一志望以外の大学や学部の指定校推薦を受験して合格すると、第一志望の大学、学部を受験することはできません。合格後の辞退が絶対にできないわけではありませんが、来年以降高校への推薦枠が無くなったり減ったりして、高校の後輩たちに迷惑をかけることになるかもしれません。
指定校推薦で受験する場合、その後に進路選択をする自由はありません。そのため、指定校推薦を受験する場合は、事前にその大学が本当に自分が行きたい大学かどうかをよく考え、進路選択を進める必要があります。
指定校推薦は校内選考の競争率が高い
指定校推薦のデメリットとして、校内選考の競争率が高いことがあります。
指定校推薦は、大学が指定した高校の生徒のみが受験できますが、推薦には枠があります。推薦枠はそう多くなく、一般的には1〜2枠だと思います。その大学に対して進学を希望する生徒たちが多数いる場合、推薦を受けるための競争率が高くなります。
学校がその指定校に対して進学を希望する生徒を推薦するため、高校三年間の成績が重視されます。そのため、指定校推薦を受験する生徒たちは、高校一年生から学力を維持し、高い成績を維持しておくことが求められます。また、成績だけではなく高校でのさまざまな活動も評価のポイントになってきます。
国公立大学は指定校推薦を実施していない
指定校推薦のデメリットとして、国公立大学は実施していないことがあります。国公立大学では、入学試験の選抜方法として、推薦入試やAO入試を実施していますが、指定校推薦は実施していません。
そのため、国立大学や公立大学を目指す場合は、指定校推薦で私立大学を受験することなく、目標とする国立大学の受験勉強をすることになります。
指定校推薦以外の選択肢についての比較
一般入試
一般入試は、大学が実施する入試を受験する最も一般的な方式です。
一般入試では、試験科目や試験内容が事前に公表されており、受験生たちはその科目や内容に基づいて受験の準備を進めます。また、一般入試では、受験の成績を基に判断して入学者を決定します。指定校推薦と異なり、学校や先生の推薦を受けることはできませんが、多数の大学が実施しているため、進路選択の選択肢として広がりがあります。
日程さえ合えば、いくつでも受験することができますし、同じ大学を複数回受験することも可能です。
総合型選抜(AO入試)
総合型選抜(AO入試)は、大学が事前に設定した書類審査や面接などの試験を受験する入試方式であり、一般入試や指定校推薦に比べて、学力以外の要素も考慮されます。たとえば、学校生活での活動や研究、アルバイトやボランティアなど、個性的な経験や活動が入学判断に反映される場合があります。
総合型選抜(AO入試)は、指定校推薦と異なり、自分で応募するため、受験生自身が自分のアピールポイントをしっかりと伝えることが必要です。また、総合型選抜(AO入試)は、一般入試と同様に複数の大学で実施されているため、進路選択の選択肢として広がりがあります。
指定校推薦とAO入試は、一般入試に比べて、学力以外の要素が評価される入試方式です。しかし、指定校推薦は大学が高校を指定して行う入試方式であり、AO入試は受験生が大学に直接応募する入試方式である点が異なります。どちらの入試方式も、受験生の個性や経験が評価されることが多いため、自己分析や自己PRの力が求められるといえます。
公募型推薦入試
公募型推薦入試とは、大学が公募する推薦入試のことです。指定校推薦とは異なり、応募できる学校の制限がないため、どの高校の生徒で出願することができます。
公募型推薦入試に応募するには、大学が定める応募基準を満たす必要があります。ここで重視されるのは、「学習成績の状況」と「調査書」の内容です。
国公立大学でも多くの大学が公募型推薦入試を実施しています。ただし、合格基準は私立大学より厳しいです。
公募型推薦入試は、基本的には専願で合格したら入学することが前提ですが、大学によっては、併願を認めるところもあるようです。
指定校推薦を選ぶかどうかの判断方法
指定校推薦を選ぶかどうかの判断基準は、自分自身の希望や進路目標に合った大学が指定校推薦を実施しているかどうかです。また、指定校推薦は、他の入試方式に比べて合格率が高い(ほぼ合格できる)ため、子どもの進路希望に合った大学が指定校推薦を実施している場合、指定校推薦を選ぶメリットがあります。
一方で、指定校推薦で合格した場合にはその大学に進学することが前提になります。指定校推薦は、早く進学先が決まるメリットがありますが、単に受験を早く終わらせたいといった消極的な理由で選ぶと、大学に入学してから後悔することになるかもしれません。
本当にその大学に進学したいのかをよく考えてから、指定校推薦に応募するのかどうかを決めるようにする必要があるでしょう。
指定校推薦が向いている人
指定校推薦は、以下のような人に向いていると言えます。
- 高校での成績が優秀で校内選考を勝ち抜けそうな人
- 指定校推薦を実施している大学に進学したいと考えている人
- 高校の先生や学校との信頼関係が築けている人
指定校推薦は、他の入試方式に比べて合格率が高く、進学先が決まるのが早いため、魅力的な選択肢の一つです。しかし、逆に言えば、指定校推薦で合格した場合にはその大学に進学することが強制されることになります。また、指定校推薦では校内選考の競争率が高いため、高い成績を維持することが求められます。そのため、自分自身の学力や進路希望、学校や先生との信頼関係などを総合的に判断し、慎重に選択することが重要です。
まとめ
指定校推薦には、指定校推薦は合格の可能性が高い、早い時期に合格(進学先)が決まる、自分の学力以上の大学に進学できる可能性があるというメリットがあります。
一方で、指定校推薦には、志望校、志望学部の推薦があるとは限らない、専願のため他大学を受験できず合格したら入学しなければならない、指定校推薦の校内選考の競争率が高い、国公立大学は指定校推薦を実施していないというデメリットもあります。
メリットばかり見て決めるのではなく、本当にその大学に進学したいのか本人の希望をよく聞いて、親としてもアドバイスしたいところですね。