私たち親世代のころの私立大学は1つの学科を1回しか受けられませんでした。今は同じ学部でも試験の方式が複数あり、日程が重ならなければ何度か受けられる大学もあります。
そのぶん方式ごとに必要な科目や試験会場、出願の条件が違います。名前だけで判断せず募集要項で中身を確かめることが欠かせません。
ですからここに書くのは私立を受験した親の体験ではありません。文部科学省や大学入試センターと大学の公式資料で確かめた2027年度入試のしくみです。
私立大学の入試は3つの選抜区分と、一般選抜の方式を分けて考える
私立大学の入試も、国立大学と同じく一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜の3つに分かれます。「学部別」「全学部統一」「共通テスト利用」はこのうち一般選抜の中の方式の名前です。
✏️私立大学の入試区分と主な方式
| 選抜区分 | 主な方式の例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一般選抜 | 学部別入試、全学部統一入試、共通テスト利用入試、共通テストと独自試験の併用 | 学力試験が中心。方式ごとに出願する |
| 学校推薦型選抜 | 指定校制、公募制など | 高校の校長の推薦が必要。調査書と面接などで評価 |
| 総合型選抜 | 自己推薦型など(名称は大学ごと) | 本人が出願。書類と面接などで評価 |
方式の名前は大学ごとに違い、すべての大学がすべての方式を行うわけではありません。たとえば明治大学の2027年度入試ガイドでは、一般選抜に「学部別入学試験」「全学部統一入学試験」「大学入学共通テスト利用入学試験」の3つがあり、この3つの間で併願できるとしています。
以前の「AO入試」は今の総合型選抜にあたります。総合型選抜は学校推薦型選抜の一種ではなく、高校の推薦がなくても本人の意思で出願できる別の区分です。
一般選抜の学部別・全学部統一は何が違う?
学部別入試は学部ごとに日程と問題を分けて行う方式で、全学部統一入試は複数の学部が同じ日に共通の問題で行う方式を指すことが多い呼び名です。名称や実施する学部、試験日、併願できる範囲は大学ごとに違うので、名前から中身を決めつけないことが大切です。
学部別入試は、学部・方式ごとに科目と配点が違う
学部別入試は親世代の「一般入試」に近い方式です。試験日も問題も学部ごとに分かれていて必要な科目や配点も学部・方式ごとに違います。
明治大学の2027年度入試ガイドを見ると、学部別入学試験は2月7日から17日まで学部ごとに日が分かれています。会場は大学のキャンパスです。
全学部統一入試は、併願できる範囲を大学ごとに確認する
明治大学の全学部統一入試では、全10学部が同じ日に共通の問題で試験を行い、科目の条件を満たせば複数の学部・方式を併願できます。1回の試験で同じ大学の別の学部にも挑戦できるしくみです。
明治大学の2027年度の全学部統一入学試験は2月5日です。東京・神奈川のキャンパスのほか、札幌・仙台・名古屋・大阪・広島・福岡でも受験できます。学外の会場で受けられれば、遠方の受験生は移動や宿泊の負担を減らせます。
ただし「全学部」という名前でもすべての学部が参加しているとは限りません。併願できる学部・方式や科目の組み合わせ、会場は大学ごとに違うので募集要項で確かめます。
試験は1回でも、複数の学部・方式に出願すれば出願件数は増え、検定料もかかります。明治大学の全学部統一入学試験は1学部・1方式35,000円で、2つ目以降は1つにつき20,000円です(2027年度入試ガイド)。
英語の資格・検定試験は「出願資格」「加点」などの使われ方を読む
英検などの英語の資格・検定試験の成績を使う方式もあります。使われ方は大学・学部・方式によって違います。明治大学の2027年度入試ガイドにも、基準を満たすことを出願の条件にする方式と、出願の条件に加えて得点に加点する方式があります。
資格・検定試験を使う場合は、どの試験のいつ以降の成績が使えるか、証明書をいつまでに出すかも決まっています。高校2年生のうちから受けておく必要があるかどうかも志望校の要項を早めに見ておけばわかります。
共通テスト利用・併用は独自試験の有無を確認する
共通テスト利用入試は大学入学共通テストの成績を使って合否を決める方式です。共通テストの成績だけで決まる方式と、大学の独自試験と組み合わせる方式(併用方式)があるので、まずどちらなのかを確かめます。
成績だけで決まる方式と、独自試験と組み合わせる方式
成績だけで合否が決まる方式ならその大学の試験会場へ行く必要はありません。併用方式では共通テストに加えて大学の試験も受けます。名前が似ていても中身は違うので、募集要項で「どの科目の得点を使うか」「独自試験はあるか」を読みます。
明治大学の2027年度の大学入学共通テスト利用入学試験は共通テストの成績だけで合否を判定します。前期日程はすべての学部で行い、後期日程は一部の学部だけです。
共通テストと私立大学への出願は別
共通テストを受けただけでは私立大学に出願したことにはなりません。共通テストの出願(2026年9月15日〜10月2日)とは別に、志望する私立大学にもその大学の期間内に出願します。
出願の締め切りが共通テストより前に来る大学もあります。明治大学の共通テスト利用・前期日程の出願期間は1月7日から15日までで、共通テスト(1月16日・17日)の前に締め切られます。得点がわからないうちに出願先を決めることになります。
一方で同じ明治大学の後期日程は、2月22日から3月1日までが出願期間です。同じ大学のほかの入試の合否を見てから出願できます。出願の時期は大学・日程ごとに違うので、得点を見てから出願できるとは限りません。
私立大学だけを受ける場合も、方式によっては共通テストが必要
私立大学だけを志望していても、共通テスト利用入試や併用方式に出願するなら共通テストを受けておく必要があります。秋の共通テストの出願を逃すとその年はこれらの方式に出願できません。
共通テストの成績だけで決まる方式は、学部別入試に比べて募集人員が少ないことがあります。明治大学の2026年度入試では、共通テスト利用入試の募集人員は合計759名で、学部別入試(3,673名)のおよそ5分の1でした。国公立大学を目指す受験生も併願するので得点の水準が高めになる、といわれることもあります。ただ募集人員や倍率は方式・学部によって違い、明治大学の同じ年の結果でも、共通テスト利用入試の倍率が学部別入試より低い学科がありました。一概にどちらが難しいとはいえません。方式ごとの募集人員や志願者数、合格者数は、大学が公表している前年度の入試結果で確かめられます。
「共通テスト利用なら独自の対策がいらない」「すべり止めに向いている」と言われることもあります。ただ必要な科目数や合格に必要な得点は大学・学部によって違います。どの方式が向いているかは志望校の要項と本人の得意科目で判断することになります。
学校推薦型と総合型は出願資格・評価・専願の条件を読む
学校推薦型選抜と総合型選抜は一般選抜より早い秋から始まる入試です。合格したら必ず入学する「専願」か、ほかの大学と併願できるかは大学・方式ごとに違います。出願する前にこの条件を親子で確かめておきます。
学校推薦型選抜は、高校の校長の推薦が必要
学校推薦型選抜は高校の校長の推薦を受けて出願する入試です。文部科学省の実施要項では、調査書を主な資料にしながら面接などを組み合わせて評価するとされています。2027年度入試の出願は2026年11月1日以降、合格発表は12月1日以降です。
私立大学の学校推薦型選抜には「指定校制」と「公募制」などがあります。指定校制は大学が指定した高校の生徒だけが出願でき、公募制は大学の出願条件と高校側の推薦の要件を満たせば、指定校以外の高校からも出願できます。指定校推薦は高校内の選考を経て推薦が決まることが多く、合格したらその大学に入学することが前提となるのが一般的です。
指定校推薦の校内選考や専願の条件は、指定校推薦のメリット・デメリット|親子で確認したい条件と選び方でくわしく説明しています。
総合型選抜は本人が出願し、書類と面接などで評価される
総合型選抜は高校の推薦がなくても本人の意思で出願できる入試です。志望理由書や活動報告書などの書類と、面接やプレゼンテーションなどを組み合わせて評価します。2027年度入試の出願は2026年9月1日以降、合格発表は11月1日以降です。
どちらも学力を見ない入試ではない
学校推薦型も総合型も学力をまったく見ない入試ではありません。文部科学省は小論文や口頭試問、教科・科目のテスト、共通テストなどのうち少なくとも1つで知識や思考力を評価するよう求めています。
専願か併願か、合格後に入学を辞退できるか、入学金をいつまでに払うかは大学・方式ごとに決まっています。募集要項の出願資格と合わせて出願前に読んでおきます。
募集要項で本人に合う方式を比べる
どの方式が合うかは本人の得意科目や志望の強さ、受験できる日程で変わります。方式の名前で選ばず、科目・日程・費用・入学の条件を同じ表に並べて比べると判断しやすくなります。
✅方式を比べるときの項目
- 大学・学部・方式の名前
- 出願資格(英語の資格・検定試験の基準など)
- 必要な科目と配点
- 独自試験があるか(共通テスト利用か併用か)
- 試験日と試験会場(学外の会場があるか)
- 出願期間と、出願が完了する条件
- 検定料(併願したときの割引があるか)
- 合格発表の日と、入学手続・入学金の期限
必要な科目と、本人の得意科目が合うか
同じ学部でも方式によって科目の数や配点が違います。英語の配点が高い方式、科目数が少ない方式、共通テストの高得点の科目を使う方式などがあり、本人の得意不得意で有利・不利が変わります。
同じ学部に複数の方式で出願できるか、日程が重ならないか
同じ学部に複数の方式で出願できるかどうかは大学ごとに決まっています。明治大学の2027年度入試ガイドでも、共通テスト利用入試の中で同じ学部の学科間や方式間を併願できるかは学部によって違います。
試験日が重なっていないか、移動の時間をとれるかも見ておきます。学外の会場で受けられる方式なら遠方でも移動や宿泊の負担を抑えられます。
入学金の期限と、入学するかどうかの判断
私立大学の入学手続の締め切りは国公立大学の合格発表より前に来ることがあります。国公立大学が第一志望なら、私立の入学金を払うかどうかを国公立の結果が出る前に決めなければならない場合もあります。
文部科学省の実施要項は、3月31日までに入学を辞退した人には入学金以外の授業料などを原則として返すよう大学に求めています。ただし専願や学校推薦型選抜(これに類する入試を含む)に合格して入学手続をした人は除かれ、入学金は返ってこないのが一般的です。
入試ガイドは方式の概要を前もって知るための冊子で、確定した条件は大学が公表する募集要項に書かれます。明治大学も2027年度の一般選抜要項は11月上旬にホームページで公開予定としています。出願の前には受験する年度の要項で最終確認をします。
方式がわかったら、校数・日程・受験予算を決める
方式のしくみがわかったら実際にどの大学・方式に出願するかを決めます。方式を増やすほど受験の機会は増えますが、検定料と試験日の負担も増えます。出願の数を増やせば合格しやすくなるとは限りません。
まず本人が学びたい学部と親が出せる受験の予算をはっきりさせます。そのうえで方式ごとの試験日を並べ、移動や連続受験の負担と第一志望の対策に使える時間を考えます。
国公立大学と併願するなら、国公立の入試のしくみもあわせて知っておくと私立の入学金を払う時期などを判断しやすくなります。受験校の数や費用と日程の決め方は次の記事にまとめています。
私立大学の入試に関するよくある質問
Q. 私立大学だけを受ける場合も、共通テストは受ける必要がありますか?
学部別入試や全学部統一入試など大学の独自試験だけで出願するなら、共通テストは必要ありません。共通テスト利用入試や併用方式に出願する場合は受けておく必要があります。
Q. 共通テストを受ければ、私立大学にも出願したことになりますか?
なりません。共通テストの出願とは別に、私立大学にもその大学の期間内に出願します。締め切りが共通テストの前に来る大学もあります。
Q. 同じ学部を何回も受けられますか?
学部別・全学部統一・共通テスト利用など、複数の方式で同じ学部に出願できる大学もあります。ただし併願できる範囲は大学・学部ごとに違うので、募集要項で確かめてください。
Q. 全学部統一入試なら、どの学部にも出願できますか?
名前に「全学部」とあっても、参加していない学部や併願の組み合わせに制限がある場合があります。複数の学部に出願すればそのぶん検定料もかかります。
Q. 指定校推薦で合格したら、ほかの大学は受けられますか?
指定校推薦は合格したらその大学に入学することが前提になっているのが一般的です。専願か併願かは大学・方式ごとに決まっているので、出願する前に募集要項と高校の先生に確かめてください。
まとめ
私立大学の入試は一般選抜・学校推薦型選抜・総合型選抜の3つに分かれ、一般選抜の中に学部別・全学部統一・共通テスト利用などの方式があります。同じ学部を複数の方式で受けられる大学もあり、親世代のころより受験の機会は増えています。
その一方で方式ごとに科目・配点・日程・会場・併願の条件が違い、名前だけでは中身がわかりません。共通テスト利用入試は共通テストとは別に大学への出願が必要です。
どの方式で受けるかは本人の得意科目と志望で決まります。親は受験する年度の募集要項を一緒に読み、検定料と入学金の期限、試験日程の確認を受け持ってください。
この記事で参照した公式情報
2026年10月11日に、次の情報を確認して作成しました。