高等教育の修学支援新制度は、大学などの授業料・入学金を減らす「減免」と、返済のいらない「給付型奨学金」の2つで、国が学費を支援する制度です。2020年度に始まり、2024年度には中間所得の多子世帯などへ、2025年度には多子世帯の授業料・入学金へと、対象が広がってきました。
「大学無償化」と呼ばれることもありますが、すべての学費が無料になるわけではありません。減免には上限額があり、世帯の所得や資産、成績、進学先の大学などの条件もあります。
支援額や年収の目安、申し込みの時期は、文部科学省と日本学生支援機構(JASSO)の2026年度の情報で確かめました。年度ごとに見直されるので、確認先の公式サイトも載せています。
高等教育の修学支援新制度とは?
修学支援新制度は、家庭の経済的な事情で進学をあきらめずに済むよう、国が大学などの学費を支援する制度です。支援は次の2つで、所得の条件を満たせば両方をあわせて受けられます。ただし、第IV区分で私立大学の理工農系の学部に進む場合(多子世帯でない場合)や、多子世帯で所得が給付型奨学金の基準を超える場合は、減免だけを受けることになります。
✏️修学支援新制度の2つの支援
| 授業料・入学金の減免 | 給付型奨学金 | |
|---|---|---|
| 内容 | 大学に納める授業料・入学金が減額・免除される | 生活費などにあてるお金が支給される |
| お金の流れ | 大学への支払いが減る | JASSOから学生の口座に毎月振り込まれる |
| 手続き先 | 進学先の大学 | 高校(予約採用)または大学(在学採用)を通じてJASSOに申し込む |
| 返済 | 不要 | 不要 |
減免は払うお金が減る支援、給付型奨学金はお金がもらえる支援です。私立大学のように授業料が減免の上限を超える場合や、一人暮らしで生活費がかかる場合は、給付型奨学金を学費や生活費の不足分にあてることになります。
対象になる学校
対象になるのは、国や自治体が一定の要件を満たしていると確認した大学・短期大学・高等専門学校(4・5年生)・専門学校です。大学院は対象になりません。
すべての学校が対象とは限りません。志望校が対象かどうかは、文部科学省の「支援対象校一覧」で確認できます。
減免されるのは授業料と入学金だけで、施設設備費や実習費は対象になりません。減免額の上限は次の見出しのとおりです。
支援額はいくら?授業料等減免と給付型奨学金
支援額は世帯の所得による区分(第I区分〜第IV区分)で決まります。最も支援が手厚い第I区分(住民税非課税世帯)が「満額」で、第II区分はその3分の2、第III区分は3分の1、第IV区分は4分の1です。ただし、多子世帯の授業料・入学金の減免は、区分にかかわらず上限額まで受けられます。また、第IV区分の私立理工農系(多子世帯でない場合)は、給付型奨学金はなく減免のみです。
授業料・入学金の減免額(上限)
第I区分と多子世帯の減免の上限額(年額)は次のとおりです。
| 学校の種類 | 国公立 入学金 | 国公立 授業料 | 私立 入学金 | 私立 授業料 |
|---|---|---|---|---|
| 大学 | 28万円 | 54万円 | 26万円 | 70万円 |
| 短期大学 | 17万円 | 39万円 | 25万円 | 62万円 |
国立大学の標準額(入学金282,000円・授業料535,800円)なら、第I区分で入学金と授業料がほぼ全額減免されます。私立大学は授業料の平均が上限の70万円を上回り、差額は自己負担です。
たとえば私立大学の文科系の平均(令和7年度)で計算すると、授業料は年850,392円なので、減免の上限70万円を引いた約15万円が自己負担です。さらに、減免の対象にならない施設設備費が平均で年141,892円かかります。第I区分でも、私立大学では年間30万円前後の学費が残る計算です。
給付型奨学金の月額
給付型奨学金の月額は、国公立か私立か、自宅から通うか一人暮らしかで変わります。大学の月額は次のとおりです。
| 区分 | 国公立 自宅 | 国公立 自宅外 | 私立 自宅 | 私立 自宅外 |
|---|---|---|---|---|
| 第I区分 | 29,200円 | 66,700円 | 38,300円 | 75,800円 |
| 第II区分 | 19,500円 | 44,500円 | 25,600円 | 50,600円 |
| 第III区分 | 9,800円 | 22,300円 | 12,800円 | 25,300円 |
| 第IV区分(多子世帯のみ) | 7,300円 | 16,700円 | 9,600円 | 19,000円 |
第I区分で私立大学に一人暮らしで通うと、給付型奨学金は年間約91万円になります。「自宅外」として認められるのは、保護者のもとを離れて家賃を払って暮らしている場合です。
第IV区分の給付型奨学金は、多子世帯だけが対象です。私立大学の理工農系の学部に進む中間所得の世帯(多子世帯でない場合)は、給付型奨学金はなく、文系学部との授業料の差額分が減免されます。
家庭がどの区分に当たりそうかは、次の見出しの年収の目安と、JASSOの「進学資金シミュレーター」で確認できます。
対象になる条件(家計・資産・成績・学校)
支援を受けられるのは、家計(所得と資産)と成績・学ぶ意欲の両方の条件を満たし、対象校に進学した人です。
家計の条件と年収の目安
家計の条件は、年収そのものではなく、本人と保護者の住民税の情報をもとに計算した金額で判定します。同じ年収でも、家族の人数や共働きかどうかで結果は変わります。
JASSOが公表している年収の目安(会社員など給与所得者の世帯)は次のとおりです。
✏️世帯年収の目安(給与所得者の世帯)
| 世帯構成 | 第I区分 | 第II区分 | 第III区分 | 第IV区分 |
|---|---|---|---|---|
| 3人(本人・親・中学生) | 221万円 | 298万円 | 373万円 | 630万円 |
| 4人(本人・親・収入のない親・中学生) | 271万円 | 303万円 | 378万円 | 635万円 |
| 5人(本人・親・パートの親・大学生・中学生) | 親321万円+パート110万円 | 親395万円+パート110万円 | 親461万円+パート110万円 | 親698万円+パート110万円 |
第IV区分の対象は、多子世帯か、私立大学の理工農系の学部に進む場合だけです。それ以外の世帯は第III区分の目安を超えると対象外です。
表の金額は目安で、家族構成や保険料の支払い状況などによって、上回っていても対象になる場合や、下回っていても対象にならない場合があります。自営業の世帯は、年収ではなく所得の金額で目安が示されています。正確には、JASSOの進学資金シミュレーターで確認してください。
資産の条件
本人と保護者の預貯金や有価証券などの資産の合計が5,000万円以上の場合、給付型奨学金は支給されません。多子世帯の場合は、資産が5,000万円以上3億円未満でも授業料・入学金の減免は受けられます。
成績と学ぶ意欲の条件
高校在学中に申し込む予約採用の条件は、次のどちらかです。
- 高校1年から申込時までの評定平均が5段階で3.5以上
- 将来の目標をもって、進学先で学ぶ意欲があることを、レポートや面談で確認できる
評定平均が3.5に届かなくても、学ぶ意欲が確認できれば申し込めます。
入学後も支援を受け続けるための条件
入学後は大学が毎年、成績や出席の状況を確認します(適格認定)。基準は次のとおりで、該当すると「警告」や、支援の「停止(中断)」「廃止(打ち切り)」になります。
| 判定 | 主な基準 |
|---|---|
| 廃止(打ち切り) | 修得した単位数が標準の6割以下、出席率が6割以下など学ぶ意欲が著しく低い、卒業の延期が確定した、など |
| 停止(中断) | 2回続けて警告になり、2回目の理由がGPAなどの下位4分の1だけの場合(次の認定で改善すれば再開) |
| 警告(支援は続く) | 修得した単位数が標準の7割以下、GPA(平均成績)などが学部内で下位4分の1、出席率が8割以下など |
成績が著しく悪く、やむを得ない事情がない場合は、すでに受け取った給付型奨学金の返還を求められることもあります。病気やけがなどやむを得ない事情がある場合は、基準に当てはまっても警告や廃止にならないことがあるので、大学に相談してください。
そのほかの条件
予約採用に申し込めるのは、高校を卒業する見込みの人か、高校を初めて卒業した年度の末日から2年以内の人です。浪人して進学する場合も、この期間内なら申し込めます。外国籍の場合は、在留資格による条件があります。
多子世帯の授業料・入学金の減免は何が対象?
2025年度から、多子世帯の学生は世帯の所得にかかわらず、授業料・入学金が上限額まで減免されるようになりました。上限額は第I区分と同じで、大学なら国公立で入学金28万円・授業料54万円、私立で入学金26万円・授業料70万円です。
所得制限がないのは減免だけ
多子世帯の支援で所得制限がないのは、授業料・入学金の減免だけです。給付型奨学金は、多子世帯でもこれまでどおり所得の区分に応じて支給され、所得が第IV区分の基準を超える場合は支給されません。
| 世帯の所得 | 授業料・入学金の減免 | 給付型奨学金 |
|---|---|---|
| 第I〜第IV区分に当たる | 上限額まで | 区分に応じた額(満額〜4分の1) |
| 第IV区分の基準を超える | 上限額まで | 支給なし |
多子世帯でも、成績や学ぶ意欲の条件を満たし、対象校に進学する必要があります。入学後の成績の確認も、ほかの区分と同じです。
「子どもが3人以上」の数え方
多子世帯かどうかは、きょうだいの人数ではなく、保護者が扶養している子どもの数で判定します。本人が保護者に扶養されていて、保護者の扶養する子どもが3人以上いる場合が対象です。
3人きょうだいでも、上の子が就職して扶養から外れると、扶養する子どもが2人になり、多子世帯に当たらなくなります。反対に、3人とも扶養されている間は、第1子も含めて支援の対象になります。
アルバイト収入のある大学生のきょうだいは、年収123万円以下なら「子ども」として数えます。年収が123万円を超え160万円以下の場合も、別に申告すれば数えられるようになりました。数え方の細かい条件は、JASSOの「多子世帯支援について」で確認してください。
多子世帯かどうかは、毎年の住民税の情報で判定し直します。上の子の就職などで扶養する子どもの数が変わる年は、支援が続くかどうかを事前に確認しておきましょう。
申請の方法と時期(予約採用・在学採用)
修学支援新制度は、給付型奨学金の手続きとして申し込みます。進学前に高校を通じて申し込む「予約採用」と、進学後に大学を通じて申し込む「在学採用」があります。
| 予約採用 | 在学採用 | |
|---|---|---|
| 申し込む時期 | 高校3年生の4月ごろ(締め切りは高校ごと) | 大学入学後の4〜6月ごろ・9〜11月ごろ(締め切りは大学ごと) |
| 申し込む窓口 | 在学している高校 | 進学した大学 |
| 申込の方法 | 学校から書類を受け取り、インターネットで申し込み、本人と保護者のマイナンバーを提出する | |
予約採用の流れ
- 高校3年生の春に、高校から案内と申込書類を受け取る
- インターネットで申し込み、マイナンバーを提出する
- 採用候補者になったかどうかの結果が、高校を通じて届く
- 進学先が決まったら、入学後に「進学届」をインターネットで提出する
- 進学先の大学で、授業料・入学金の減免の手続きをする
予約採用で採用候補者になっていても、進学届を出さなければ支援は始まりません。入学後の進学届と、大学での減免の手続きを忘れないようにしましょう。
採用候補者決定通知を受け取ったあとの準備は、奨学金の予約採用、その後は?入学前の準備と進学届のチェックリストで説明しています。
在学採用は春と秋に申し込める
高校で申し込まなかった人や締め切りに間に合わなかった人も、入学後に大学で在学採用に申し込めます。在学採用は春と秋の2回あり、春に申し込んで対象外だった場合も、秋にもう一度申し込むことで対象になる可能性があります。
在学中に保護者の失業や病気、災害などで家計が急に苦しくなった場合は、1年を通して申し込める「家計急変」の仕組みもあります。申し込めるのは、原則として急変の理由が起きてから3か月以内です。最初に大学の学生支援の窓口へ相談してください。
入学手続きのときの支払いはどうなる?
減免が正式に決まるのは入学後です。入学前に入学金などの納付を求める大学では、手続きのときにいったん払い、入学後に減免が決まってから還付を受ける流れになります。
支払いが難しい場合は、納付の期限を延ばしてもらえないか、進学先の大学に相談できます。納付を待ってもらえるかどうかは大学によって違うので、合格したら早めに大学に問い合わせてください。
併願した大学の入学金は減免されない
入学金の減免の対象になるのは、実際に進学した1校の入学金だけです。第一志望の結果を待つ間に併願した大学へ払った入学金は、減免の対象になりません。
合格したら大学に確認したいこと
✅進学先の大学に確認すること
- 入学手続きのときに払う金額と、その期限
- 予約採用の採用候補者の場合、入学金や授業料の納付を待ってもらえるか
- いったん払った場合、減免分がいつ、どのように還付されるか
- 減免の申請に必要な書類と、提出の期限
- 施設設備費など、減免の対象にならない費用の金額
入学前にまとまったお金を用意するのが難しいなら、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」などを検討する方法もあります。文部科学省も、入学前の資金には国や都道府県の支援、教育ローンなどを確認するよう案内しています。
対象外だったとき・支援が足りないときに検討すること
修学支援新制度の対象外だったときや、支援を受けても学費や生活費が足りないときは、ほかの制度を組み合わせます。
- 大学独自の授業料減免・徴収猶予:国の制度とは別に、大学が独自に授業料の減免や支払いの猶予を設けていることがあります。国の制度と一緒に使える場合もあるので、進学先の「学費」「経済支援」のページで確認しましょう(探し方は大学独自の授業料免除・徴収猶予の記事で紹介しています)。
- JASSOの貸与型奨学金:無利子の第一種と有利子の第二種があります。修学支援新制度の給付型奨学金を受ける場合、第一種は借りられる額が減らされますが、第二種はあわせて借りられます。
- 自治体や民間の奨学金:返済のいらない給付型も多くあります。JASSOのサイトや高校の進路指導室で探せます。
給付型奨学金を探すなら、大学や自治体、企業の奨学金をまとめた次のガイドも使えます。
高等教育の修学支援新制度に関するよくある質問
Q. 年収がいくらまでなら対象になりますか?
家族構成によって変わります。JASSOの目安では、本人・会社員の親・収入のない親・中学生の4人家族の場合、第I区分が約271万円、第II区分が約303万円、第III区分が約378万円までです。多子世帯や私立大学の理工農系の学部に進む場合は、第IV区分として約635万円までが目安になります。正確にはJASSOの進学資金シミュレーターで確認してください。
Q. 多子世帯なら、給付型奨学金も所得に関係なくもらえますか?
もらえません。所得制限がないのは授業料・入学金の減免だけです。給付型奨学金は、多子世帯でも所得の区分に応じて支給され、第IV区分の基準を超えると支給されません。
Q. 私立大学でも学費は無料になりますか?
無料にはなりません。私立大学の授業料の減免は年70万円が上限で、授業料がそれを超える分や、施設設備費・実習費は自己負担です。第I区分なら給付型奨学金もあわせて受けられるので、その分を学費の不足分にあてることになります。
Q. 大学院も対象になりますか?
対象になりません。修学支援新制度の対象は、大学・短期大学・高等専門学校(4・5年生)・専門学校です。
Q. 浪人してから進学する場合も申し込めますか?
高校を初めて卒業した年度の末日から2年以内であれば、予約採用に申し込めます。入学後に在学採用で申し込むこともできます。
まとめ
高等教育の修学支援新制度は、授業料・入学金の減免と給付型奨学金の2つで学費を支援する国の制度です。
- 支援額は所得の区分で決まり、第I区分が満額、第II区分が3分の2、第III区分が3分の1、第IV区分が4分の1。多子世帯の減免は区分にかかわらず上限額まで。第IV区分の私立理工農系(多子世帯でない場合)は減免のみ
- 減免の上限は、大学なら国公立で入学金28万円・授業料54万円、私立で入学金26万円・授業料70万円
- 年収の目安は家族構成で変わる。4人家族なら第III区分で約378万円まで
- 多子世帯は所得にかかわらず減免を受けられるが、給付型奨学金は所得に応じる
- 申し込みは、高校3年生の春の予約採用か、入学後の在学採用。入学時の支払いは原則いったん必要
支援額や条件は年度ごとに見直されます。子どもが高校2年生から3年生になるころに、最新の条件を文部科学省やJASSOのサイトで確認し、進学資金シミュレーターで対象になりそうかを調べておきましょう。
大学に進学すると、学費のほかに一人暮らしの費用もかかります。必要なお金の全体は次の記事でつかめます。