子どもが国立大学志望なので授業料を調べたら、思ったより高いわね。
そうですね。今のお父さんお母さんが大学生だった頃と比べると大学の授業料は高くなっています。
その間、全体の所得が増えているわけではないので、家計にかかる負担は大きくなっているんですよ。
国立大学の授業料
国立大学の授業料の標準額は、今は年間53万5800円です。
私が大学生の頃は私立大学文系の授業料でも、今の国立大学の授業料より安かったような気がします。
文部科学省のサイトに国立大学と私立大学の授業料の推移があったので、ここから少し抜粋してみると次のようになります。
年 | 国立大学授業料(円) | 私立大学授業料(円) |
昭和55年 | 180,000 | 355,156 |
昭和60年 | 252,000 | 475,325 |
平成元年 | 339,600 | 570,584 |
平成8年 | 447,600 | 744,733 |
平成18年 | 535,800 | 836,297 |
平成31年 | 535,800 | ー |
例外
国立大学でも東京工業大学は、平成31年以降の入学者の授業料を635,400円に値上げしました。東京藝術大学、一橋大学、千葉大学も授業料の値上げを発表しています。今後は国立大学でも大学間、学部間で授業料に差が出るかもしれません。
国立大学の授業料は、ここ10年程は据え置かれていますが、平成元年と比べると20万円近く高くなっています。
今の国立大学の授業料は平成元年当時の私立大学の授業料と比べても、そんなに変わりません。
そんな国立大学の授業料ですが、所得によって全額または半額を免除してもらえる制度があるんです。
授業料免除って生活保護世帯とか相当所得が低くないと無理なんじゃない?
と、思いますよね。ですが、意外と授業料免除の所得基準は高いんです。
日本学生支援機構の給付型奨学金の基準と比べてどうですか?
日本学生支援機構の給付型奨学金は住民税の非課税世帯が対象です。国立大学の授業料免除は、それよりも収入が多くても対象になる可能性がありますよ。
ここでは国立大学の授業料免除制度について説明します。
授業料免除の基準
国立大学の授業料免除の基準は、学力基準と家計の所得基準の2つの基準があり、両方の基準を充たさないといけません。
また、各大学に授業料免除の予算があり、応募者が多いと基準を充たしていても授業料の免除決定がされないこともあります。
文部科学省が授業料免除選考基準を設けていました。以下は、以前の文部科学省の基準に基づいて説明します。
授業料免除の学力基準
学力基準は、入学時については、高校の成績、入試の成績、あるいは高校成績に入試成績を加味したものが一定の水準以上であることとされています。
この学力基準は、各大学が独自に定めています。
学力基準大学ごとの例(入学時)
神戸大学では、「高校の調査書の学習成績の平均値が3.5以上」とされているので、高校の成績が基準になります。
二年時以降は、大学での成績が学力基準になってきますので、単位を落としていたり、成績が芳しくないと、二年時以降は授業料免除を受けられない可能性もあります。
授業料免除を検討している場合、大学でもしっかり勉強するよう子どもに伝えておく必要がありそうですね。
授業料免除の家計基準
いきなり計算式で申し訳ないですが、国立大学の授業料免除の家計基準は次の計算式で計算して、家計評価額が0円以下になれば適格となります。
家計評価額=総所得金額ー特別控除額ー収入基準額
「総所得金額」「特別控除額」「収入基準額」とよくわからない言葉が出てきたので、1つずつ説明しましょう。
総所得金額
総所得金額とは、収入から必要経費を差し引いた金額なのですが、一番分かりやすいサラリーマンのような給与所得者を例にしてみましょう。
サラリーマンの場合は、次の計算式で収入から所得控除額を差し引いたもの(収入ー所得控除額)が総所得額となります。
収入金額(税込) | 所得控除額 |
104万円以下 | 収入金額と同額(全額控除) |
104万円を超えて200万円まで | 収入金額×0.2+83万円 |
200万円を超えて653万円まで | 収入金額×0.3+62万円 |
653万円を超えるもの | 258万円 |
所得金額の計算例
給与収入が500万円の場合
500万ー(500万×0.3+62万円)= 288万円(所得金額)
給与収入が700万円の場合
700万円ー258万円 = 442万円(所得金額)
このような計算を収入を得ている家族ごとにして、最後に合算したものが家計の総所得金額となります。
奨学金を受給している場合、前年1年間に実際に受け取った奨学金の額を所得の金額とします。
特別控除額
特別控除額は、本人を対象とする控除と世帯を対象とする控除とがあります。
本人を対象とする控除本人を対象とする控除は、大学に自宅通学している場合は28万円、自宅外通学の場合は72万円が控除されます。
世帯を対象とした控除はさまざまな事情により控除されるものですが、一般的にありそうなのが母子・父子家庭と他に兄弟姉妹など他にも就学者がいるケースです。
母子家庭母子・父子家庭の場合は、49万円が控除されます。
兄弟姉妹就学者が他にいる場合は、細かく控除額が決められています。
例として公立の学校に自宅から通っている弟または妹がいる場合、控除額は下の表のようになります。
この例に限らず、弟または妹が私立の学校に通っている場合、兄弟姉妹が大学生の場合、自宅か自宅外かなど条件によって細かく控除額が定められています。
就学者(公立・自宅通学) | 控除額 |
小学生 | 80,000円 |
中学生 | 160,000円 |
高校生 | 280,000円 |
この他にも、世帯に障害者がいる場合は86万円、主たる家計支持者が別居している場合71万円など特別控除が定められています。
収入基準額
収入基準額は、世帯の人数に応じて決まるもので、全額免除と半額免除それぞれで基準額が決められています。
世帯 | 全額免除 | 半額免除 |
1人 | 880,000円 | 1,670,000円 |
2人 | 1,400,000円 | 2,660,000円 |
3人 | 1,620,000円 | 3,060,000円 |
4人 | 1,750,000円 | 3,340,000円 |
5人 | 1,890,000円 | 3,600,000円 |
6人 | 1,990,000円 | 3,780,000円 |
7人 | 2,070,000円 | 3,950,000円 |
この基準額も大学により多少異なるようで、実際に東京大学ではこれとは異なる基準になっています。
国立大学授業料免除の例
基準だけ見てもピンとこないと思いますので、例をあげて授業料が免除になりそうか検討してみます。
3人家族の事例
両親と本人の3人家族で、お父さんがサラリーマンで給与収入が600万円、お母さんなは専業主婦、本人は自宅外通学とします。
お父さんの所得は、上で説明した総所得金額の計算(収入ー所得控除額)によります。
これを計算すると、600万ー(600万×0.3+62万円)=358万円。
家計に他に収入はないので、これが家計の総所得となります。
特別控除額は、本人が自宅外通学なので72万円。
この他に特別控除額はありません。
3人家族の場合、全額免除の収入基準額は162万円、半額免除の収入基準額は306万円です。
「家計評価額=総所得金額ー特別控除額ー収入基準額」で、この計算をした結果、家計評価額が0円以下になれば授業料免除の対象になります。
まず全額免除の対象になるか計算すると、
家計評価額=358万円ー72万円ー162万円=124万円
となり、0円以下にならないので授業料全額免除の対象とはなりません。
次の半額免除になるかどうか計算すると、
家計評価額=358万円ー72万円ー306万円=-20万円
となり、0円以下になるので半額免除の対象になります。
ちなみにこの事例の家庭では、お父さんの給与収入が628万円までであれば半額免除に該当します。
4人家族の事例
両親と本人、弟(妹)がいる世帯で、お父さんがサラリーマンで給与収入が480万円、お母さんがパートで103万円、本人は自宅外通学、弟(妹)公立の高校生とします。
お父さんの所得は、480万円ー(480万円×0.3+62万円)=274万円
お母さんの所得は、103万円ー103万円=0円
本人を対象とする特別控除額は、自宅外通学で72万円
弟(妹)が公立高校生なので28万円も特別控除できます。
4人家族の場合、全額免除の収入基準額は175万円です。
これで計算してみると、
家計評価額=274万円ー(72万円+28万円)ー175万円=-1万円
となり、この家庭は授業料の全額免除の家計基準に当てはまります。
ちなみにこの事例の家庭では、お父さんの給与収入が700万円でも半額免除の家計基準に収まります。
まとめ
国立大学の授業料免除は、細かい部分が大学により異なるようです。
また、学力基準も家計基準も授業料免除の基準内となっていたとしても、必ず免除されるとは限りません。
しかし、奨学金を借りたり親が教育ローンを借りたりすると、いずれ返済しないといけませんが、授業料の免除では将来返済するという負担はありません。
そのため、授業料の負担が重いと感じたときは、まず授業料の免除申請を検討しても良いのではないでしょうか。
授業料の細かい要件や免除申請ができる時期は各大学で決められていますので、詳しいことは進学先の大学のホームページ等でご確認ください。
また、仮に授業料免除の所得基準に当てはまらない場合でも、大学独自の給付型奨学金も選択肢のひとつになります。
参考 返済不要の給付型奨学金