入学金の二重払いは本命の合格発表より前に、併願先の入学手続きの期限が来るときに起きます。払うかどうかを決める前に併願先の納付期限、何の費用を払うのか、入学を辞退したときに返ってくる条件の3つを、大学の公式案内で確かめます。
ここでは二重払いが起きるしくみ、入学金が返ってくるかどうかの考え方、文部科学省の通知とそのあとの大学の動き、親子で作る確認表を順に説明します。内容は2026年10月に公式サイトで確認したもので、2027年度入試の情報をもとにしています。
大学の入学金の二重払いとは?
入学金の二重払いとは結果的に入学しなかった大学にも入学金を払うことです。お金を誤って2回振り込むことではありません。
本命の合格発表の前に、併願先の手続きの期限が来ると起きる
私立大学の入学手続きは、大学や入試方式によっては合格発表から短い期間で締め切られます。国公立大学の前期日程の合格発表は3月上旬なので、私立大学の手続きの期限のほうが先に来ることが少なくありません。
✏️二重払いが起きる日程の例(仮の日付)
| 日付 | できごと |
|---|---|
| 2月10日 | 併願先のA大学(私立)の合格発表 |
| 2月20日 | A大学の入学金の納付期限 |
| 3月8日 | 本命のB大学(国立)の合格発表 |
| 3月15日 | B大学の入学手続きの期限 |
この例ではB大学の結果がわかる前にA大学の入学金を払うかどうかを決めなければなりません。A大学に払ったあとでB大学に合格して進学するとA大学の入学金は入学しなかった大学に払ったお金になります。
受験料・入学金・授業料は別の費用
大学に払うお金は出願のときの受験料(検定料)、入学手続きのときの入学金、入学後の授業料や施設設備費に分かれます。入学手続きのときに入学金と一緒に前期の授業料などを払う大学もあります。どの費用を、いつまでに払うのかは大学や入試方式ごとに違うので、合格者向けの入学手続きの案内で確かめます。
入学金と授業料の金額の目安は大学の学費は4年間でいくら?国公立・私立、文系・理系で比較で説明しています。
入学金は返ってこない? 大学・方式・年度で確かめる
入学を辞退したときに入学金が返ってくるかどうかは、大学ごと、入試方式ごと、年度ごとに違います。「入学金は返らない」「今は全額返る」のどちらかに決めつけず受ける大学のその年度の案内を確かめます。
入学金と授業料では、返ってくるかどうかの扱いが違う
文部科学省の2025年の通知では2006年の最高裁判所の判決を紹介しています。判決は入学金を「大学に入学できる地位を得るための対価」と位置づけ、額が不相当に高いなどの特別な事情がない限り、入学を辞退しても大学に返す義務はないとしました。この判決が背景にあり、入学を辞退しても入学金は返還しないとする大学が一般的でした。
一方、入学手続きのときに一緒に払った前期の授業料などは、決められた期限までに辞退すれば返還の対象にしている大学があります。たとえば福岡工業大学の2027年度の案内では、2027年3月31日の正午までに辞退の手続きをすれば前期授業料などは返還の対象で、入学金だけを払った場合は返還はないとしています。
全額または一部を返す制度を設けた大学もある
2025年の文部科学省の通知のあと、入学しなかった学生の入学金の負担を軽くするしくみを設ける大学が出てきました。入学金の一部を返す、事務手数料を差し引いて返す、納付の期限を後ろにずらす、などやり方はさまざまです。対象になる入試方式や人の条件も大学ごとに違います。具体例はあとの見出しで紹介します。
専願の方式と、併願できる方式を混同しない
専願の学校推薦型選抜や総合型選抜は、合格したら入学することを前提にした入試です。推薦でも併願できる方式を設けている大学があるので、入試の名前だけでなく出願の条件を確かめます。高崎商科大学や福岡工業大学のように、専願の入試に合格した人の辞退を原則として認めない大学もあり、返還のしくみの対象からも外れていることがあります。返還の制度がある大学でも一般選抜や共通テスト利用など併願できる方式だけを対象にしている場合があります。自分が受ける方式が対象かどうかを確かめます。
2025年の文部科学省の通知で何が変わったか
2025年6月の文部科学省の通知をきっかけに、入学しなかった大学の入学金の負担を軽くする取り組みを大学に求める流れがはっきりしました。ただし、すべての大学に入学金の返還を義務づけたものではありません。
通知の前と後で、何が違うのか
✏️2025年の通知の前と後
| 通知の前 | 通知の後(2025年6月〜) | |
|---|---|---|
| 国からの求め | 入学金の額を抑えること、払うのが難しい学生への減免・分割・納付の猶予に努めること | それに加えて、入学しない学生が払う入学金の負担を軽くする方策を講じるよう努めること |
| 入学金の返還 | 最高裁判決をふまえ、返還しない扱いが基本。一部の大学が、特別な入学区分で入学金の減免や納付時期の後ろ倒しをしていた | 返還するかどうかは引き続き各大学の判断。全部または一部の返還、時期による返還額の差、納付期限の後ろ倒しなどの例を国が示した |
| 大学の公表のしかた | 募集要項に「返還しない」と書いている大学があった | 募集要項に「返還しない」とあっても、負担を軽くする取り組みはホームページなどで別に公表してよいとされた |
国が示した負担を軽くする方法の例
2026年3月に更新された文部科学省のQ&Aでは、大学が取りうる方法として次のような例を挙げています。
- 辞退の申し出の時期に応じて、入学金の全部または一部を返す
- 合格発表のあとに入学金の一部だけを払い、残りを年度内などの時期までに払う
- 入学金の納付期限を後ろにずらす
- 経済的に苦しい学生について、入学金を減免する、納付の時期を複数回にする、納付を待つ
Q&Aではどの取り組みを選ぶかは各大学の判断で、すべての方式で対応するのに時間がかかる場合は、一部の入試方式や経済的に苦しい一部の学生から段階的に始めることも考えられるとしています。そのため同じ年度でも、取り組みの有無や対象は大学によって大きく違います。
募集要項と、大学ホームページの告知の両方を見る
新しい取り組みは募集要項とは別にホームページのお知らせなどで公表されることがあります。募集要項に「入学金は返還しない」と書かれていても、あとから負担を軽くするしくみが告知されている場合があるので、受ける大学のホームページの入試情報やお知らせも確かめます。
2027年度の大学の公式情報に見る、負担を軽くするしくみ
通知のあと、2027年度入試に向けて入学金の扱いを見直した大学もあります。ここでは2027年度入試の公式案内から、しくみの違いがわかるように3つの例を紹介します。おすすめの大学や全国の制度の一覧ではありません。
✏️2027年度入試の例
| 大学 | しくみ | 対象 | 返ってくる額・延ばせる費用 |
|---|---|---|---|
| 北陸大学 | 条件付きで入学金の一部を返す | 1月以降の併願できる一般選抜(独自方式・共通テスト利用)で、給付奨学金の予約採用候補者(第1区分)に決まり、入学金を納めたうえで国公立大学に進学するために辞退する人 | 入学金20万円の半額の10万円(振込手数料は本人負担) |
| 高崎商科大学 | 事務手数料を差し引いて返す | 一般選抜・共通テスト利用選抜・総合型選抜(併願制)で入学を辞退する人 | 入学手続きのときの納入金から事務手数料5万円を差し引いた額 |
| 福岡工業大学 | 授業料などの納付を延ばす | 一般選抜の合格者で、国公立大学の中期・後期日程を併願している人 | 前期授業料などを3月24日まで延ばせる(延納願の書類は3月10日正午必着。入学金は期限までに納付。入学金だけを払って辞退した場合は返還なし) |
北陸大学:経済的に苦しい人に、入学金の半額を返す
北陸大学は文部科学省の通知をふまえて入学金の返還制度を設けました。対象は修学支援新制度の給付奨学金で予約採用の第1区分(住民税非課税世帯など)に決まっている人です。そのうえで入学金を期限までに納め、国公立大学に合格して進学するために辞退する、という条件がすべてそろったときに、入学金20万円のうち10万円が返されます。辞退と返還の申請は2027年3月31日必着です。
高崎商科大学:併願の方式なら、入学手続きの納入金を手数料を除いて返す
高崎商科大学はこれまで入学辞退のときに入学金は返していませんでしたが、2027年度入試から、併願できる方式では入学手続きのときの納入金(入学金を含む)から事務手数料5万円を差し引いて返すことにしました。推薦や専願の総合型選抜はこれまでどおりの扱いです。あわせて修学支援新制度の採用候補者を対象に、入学金と前期授業料のうち減免予定額の範囲で納付を待つ制度も設けたとしています。辞退の期限や手続きは募集要項で確かめます。
福岡工業大学:入学金は払い、授業料などを延ばす
福岡工業大学は一般選抜の合格者で国公立大学の中期・後期日程を併願している人に限り、入学金を期限までに納めて延納願を出せば、前期授業料などの納付を3月24日まで延ばせるとしています。延ばせるのは授業料などで入学金ではありません。入学金だけを払って辞退した場合は入学金は返ってきません。
このように「負担を軽くする」といっても、返す・差し引いて返す・延ばすで中身が違い、対象の条件も細かく決まっています。受ける大学に同じようなしくみがあるかはその大学の案内で確かめます。
二重払いの負担を抑えるために確かめること
二重払いを完全に避けられるかどうかは、受ける大学の日程と制度しだいです。負担を抑えるには出願の前から、合格発表と納付期限、延納と返還の条件を並べて見ておくことが大切です。
本命の合格発表と、併願先の納付期限を並べる
出願する大学ごとに、合格発表の日、入学金の納付期限、授業料などの納付期限を書き出し、本命の合格発表日と並べます。本命の結果が出る前に期限が来る大学がどれかがわかれば入学金を払うかどうかを前もって考えておけます。併願先を選ぶときに手続きの期限が本命の発表より後になる日程や方式を探せる場合もあります。
出願から入学手続きまでの日程の管理は大学受験のスケジュール|出願・試験・入学手続を親子で管理、併願の組み方は私立大学は何校受ける?併願校数・出願件数・日程の決め方で説明しています。
延納の対象に、入学金が入っているかを見る
「延納」と書かれていても延ばせるのが授業料などだけで、入学金は期限までに払う必要がある大学があります。延納できる費目、延納を申し込む期限と方法、延ばした先の納付期限を、手続きの案内で確かめます。
辞退するときの返還の条件・申請期限・差し引かれる額を見る
返還のしくみがある大学では対象になる入試方式と人の条件、辞退と返還の申請の期限、返ってくる額(全額か一部か、手数料が差し引かれるか)、返ってくる時期を確かめます。期限は「必着」「正午まで」のように細かく決まっていることがあり過ぎると返還されません。
費用だけで進学先を決めない
入学金の負担は大きいものですが、それだけで併願先を減らしたり、本命の受験をあきらめたりすると、進路の幅を狭めてしまうことがあります。本人がどの大学に行きたいのか、合格したらどこに進むのかを親子で話したうえで、入学金をどこまで払えるかを考えます。専願の入試に合格したのに辞退を前提に受ける、期限を過ぎてから払う、といった方法は大学の決まりに反するので避けます。
入学前に必要なお金と、最終的な負担を分けて見積もる
返還のしくみがある大学でもいったんは期限までに入学金を払う必要があり、返ってくるのは辞退の手続きをしたあとです。「最終的にいくら負担するか」と「その日までにいくら用意するか」を分けて考えます。
返ってくる予定があっても、納付の日にはお金が要る
次の例で考えます。
例:併願先のA大学に入学金20万円を払い、そのあと本命のB大学に入学金28万円を払う。A大学には辞退すると入学金の半額10万円を返すしくみがあり、その10万円が返ってくるのはB大学の納付期限より後の場合
- B大学の入学金を払う日までに用意するお金:20万円+28万円=48万円
- A大学から10万円が返ってきたあとの入学金の負担:48万円−10万円=38万円
(計算のしかたを示すための仮の数字で、実在の大学の条件ではありません。授業料や手数料は入れていません)
A大学から返ってくるのが3月末以降ならB大学の入学金を払う日には48万円が手元に必要です。返ってくるお金をあてにして納付日の資金を少なく見積もらないようにします。
修学支援新制度の入学金の減免は、進学する1校だけ
修学支援新制度で入学金の減免を受けられる人でも文部科学省のQ&Aでは、減免の対象は実際に進学した1校の入学金だけと説明しています。辞退した大学に払った入学金が国の制度でまとめて戻るわけではありません。進学する大学の入学金も、入学前に払った場合は、入学後に減免が確定してから減免相当額が還付されます。
修学支援新制度の入学金・授業料の減免は、高等教育の修学支援新制度とは?対象・支援額・申請方法を確認で説明しています。
払うのが難しいときは、期限の前に大学へ相談する
入学金を期限までに用意できそうにないときは期限が来る前に大学へ相談します。高崎商科大学のように、修学支援新制度の採用候補者について入学金と前期授業料のうち減免予定額の範囲で納付を待つ制度を設けた大学もありますが、制度の有無や条件は大学ごとに違います。
入学前のお金が足りないときの相談先と確認の順番は、大学の入学金が払えないとき|奨学金の振込前に確認する資金と相談先でまとめています。
親子で作る入学手続き・返還条件の確認表
出願する大学が決まったら大学ごとに期限と条件を1列にまとめた表を親子で作ります。入学手続き、延納の申請、辞退、返還の申請は、それぞれ別の手続きとして期限を書いておきます。
✅大学ごとの確認表
| 確かめること | A大学 | B大学 |
|---|---|---|
| 学部・入試方式(専願か併願か) | ||
| 合格発表の日 | ||
| 入学金の額と納付期限 | ||
| 授業料などの額と納付期限 | ||
| 延納できる費目・申請期限・延納後の納付期限 | ||
| 辞退の手続きの期限と方法 | ||
| 返還申請の期限・方法・必要書類(口座の指定など) | ||
| 返ってくる費目・額・時期 | ||
| 確かめた資料と日付 |
表を作ったら本命の合格発表の日に線を引いて、それより前に来る期限を確かめます。手続きの担当(本人か親か)も決めておくと期限の見落としを防げます。
入学金の二重払いに関するよくある質問
Q. 文部科学省の通知で、入学金は返ってくるようになったのですか?
すべての大学で返ってくるようになったわけではありません。通知は入学しない学生の入学金の負担を軽くするよう大学に求めたもので、返すかどうかや方法は各大学が判断します。受ける大学のその年度の案内で確かめます。
Q. 入学金や授業料はいつ返ってきますか?
返ってくる費目・条件・時期は大学ごとに違います。辞退と返還の申請をしたあと、大学が決めた時期に振り込まれます。たとえば福岡工業大学は授業料などの返還を4月中に行うとしていますが、これは入学金以外の費用で、入学金は返還の対象外です。返ってくる時期は手続きの案内で確かめます。
Q. 修学支援新制度を使えば、辞退した大学の入学金も戻りますか?
戻りません。修学支援新制度の入学金の減免は実際に進学した1校の入学金だけが対象です。辞退した大学の入学金が戻るかどうかはその大学の制度によります。
まとめ
入学金の二重払いは本命の合格発表より前に併願先の入学手続きの期限が来ると起きます。入学金は辞退しても返さない扱いが基本でしたが、2025年の文部科学省の通知のあと、条件付きで一部を返す、手数料を除いて返すといったしくみを設ける大学が出てきました。授業料などの納付を延ばせる大学もあります。
ただし取り組みの有無や対象は大学ごとに違います。出願の前に合格発表と納付期限を並べ、延納できる費目、返還の条件と期限を確かめておきます。返ってくる予定があっても納付の日にはお金が必要なので、最終的な負担とは分けて準備します。
この記事で参照した公式情報
2026年10月24日に、次の情報を確認して作成しました。