採用候補者に決まっても奨学金の手続きはまだ終わっていません。入学までに準備しておくことと、進学してから大学で行う手続き(進学届)が残っています。進学届を出してはじめて正式に採用され、給付や貸与の金額がある人は奨学金の振込みが始まります。給付額が0円で授業料等減免だけの候補者も、進学届などの手続きが必要です。
ここでは日本学生支援機構(JASSO)の奨学金で、国内の大学の学部に進む予定の人を対象に説明します。大学院や海外の大学、大学独自の奨学金は手続きが違うので、それぞれの案内を確かめてください。内容は2027年度(令和9年度)に進学する人向けの資料をもとにしています。
予約採用の決定後も、入学前と入学後にすることがある
予約採用は高校在学中に申し込んで、進学したあとに奨学金を受けられるよう「採用候補者」として決めておくしくみです。候補者に決まった段階では、まだ奨学生として採用されたわけではありません。
JASSOは採用候補者には進学前と進学後に必ず行う手続きがあり、提出期限などは進学先の学校の指示に従うよう案内しています。流れをまとめると次のようになります。
✏️採用候補者決定から振込みまでの流れ
| 時期 | すること |
|---|---|
| 高校在学中 | 採用候補者決定通知を受け取り、内容を確かめる |
| 入学まで | しおりを読む、本人名義の口座を用意する、保証人などの承諾をもらう(貸与)、入学金などの資金を用意する |
| 進学後すぐ | 大学に決定通知(提出用)を出し、進学届の下書き用紙と識別番号を受け取る |
| 大学が決めた期間 | インターネットで進学届を出す |
| 進学届の後 | 奨学生として採用され、給付・貸与の金額がある人は振込みが始まる。貸与は返還誓約書などを出す |
大学によっては、入学前に奨学金の案内を送り、入学直後の説明会への出席を求めるところもあります。進学先から案内が届いたらそちらの期限を優先します。
決定通知で、対象年度と奨学金の種類を確かめる
通知を受け取ったらまずどの奨学金の候補者になったのかを親子で確かめます。給付型か貸与型か、貸与なら第一種(無利子)か第二種(有利子)か、入学時特別増額貸与奨学金があるかによって、このあとの準備が変わります。
交付書類コードで、自分に必要な書類を確かめる
採用候補者決定通知には「交付書類コード」が書かれています。JASSOのページではコードごとに必要な書類が分けて示されています。
✏️交付書類コードと候補者になった奨学金(2027年度)
| コード | 候補者になった奨学金 |
|---|---|
| A | 貸与奨学金(第一種のみ・第二種のみ・併用) |
| B | Aの奨学金+入学時特別増額(「国の教育ローン」の申込みが必要) |
| C | Aの奨学金+入学時特別増額(「国の教育ローン」の申込みは不要) |
| D | Aの奨学金+給付奨学金 |
| E | Bの奨学金+給付奨学金 |
| F | Cの奨学金+給付奨学金 |
| G | 給付奨学金 |
2027年度の案内では「給付奨学生 採用候補者のしおり」「貸与奨学生 採用候補者のしおり」などは決定通知の封筒に同封されていません。自分のコードに合うしおりをJASSOのホームページからダウンロードして読みます。前の年の資料やほかの人の通知を見て判断しないようにします。
提出用と本人保管用の両方を保管する
決定通知には「提出用」と「本人保管用」があります。提出用は進学後に大学へ出す書類で、本人保管用には進学届を入力するときに必要なパスワードが書かれています。どちらも進学後まで使うのでなくさないように保管します。
JASSOは通知をなくすと奨学金の振込みが大幅に遅れる場合があると注意しています。万一なくしたときは申し込みに使ったスカラネット(JASSOの申込みサイト)から「採用候補者決定通知(簡易版)」を印刷でき、進学後の手続きに使えます。
通知にはパスワードや個人の情報が書かれています。写真を撮ってSNSや家族以外と共有するフォルダに載せないようにします。
給付型・貸与型の違いや第一種・第二種の金額は、大学の奨学金・授業料支援には何がある?給付型・貸与型と減免制度で説明しています。
入学までに本人名義の振込口座を用意する
奨学金は奨学生本人の名義の口座に振り込まれます。親の口座は使えません。JASSOは進学するまでに使える口座を必ず用意するよう案内しています。
使える金融機関と口座の種類を確かめる
令和9年度の採用候補者のしおりでは使える口座と使えない口座が次のように示されています。
✏️奨学金の振込口座(令和9年度のしおりより)
| 使える | 使えない | |
|---|---|---|
| 金融機関 | 日本国内の銀行(ゆうちょ銀行を含む)、信用金庫、労働金庫、信用組合(一部を除く)。取り扱う金融機関のインターネット支店も使える | 農協、信託銀行、外資系銀行、インターネット専業銀行、その他一部の銀行(一部の地方銀行を含む) |
| 口座 | 本人名義の普通預金(通常貯金)口座 | 本人以外の名義の口座、貯蓄預金口座、NISA口座、休眠口座 |
しおりには令和9年度から一部の地方銀行が使えなくなると書かれ、利用できる銀行は2026年9月ごろをめどにJASSOのホームページに載せる予定とされています。この記事を書いた2026年10月20日の時点では、その一覧を見つけられませんでした。今使っている口座がそのまま使えるとは限らないので、進学届を出す前にJASSOのホームページや進学先の奨学金窓口で確かめます。インターネット専業の銀行とふつうの銀行のインターネット支店は扱いが違う点にも気をつけます。
口座の名義と、決定通知のカナ氏名をそろえる
口座名義が決定通知に書かれたカナ氏名と違うと奨学金は振り込まれません。カナ氏名に変更がある場合は進学届では直せないので、進学届を出す前に進学先の学校へ申し出ます。
奨学金を申し込んだときに公金受取口座を使うと申告した人も、口座が登録されていなかったり確認できなかったりすると、進学届で振込口座を届け出る必要があります。登録の状態を前もって確かめておきます。
口座を新しく作るときは本人名義で作ります。18歳未満だと、金融機関によっては親の同意や同伴を求められることがあるので、必要な書類を窓口で確かめます。作ったあとはキャッシュカードや暗証番号を親が預かり続けるより、本人が自分で管理できるようにしておくほうが安心です。
貸与・自宅外通学・入学時特別増額は、該当する準備を足す
口座のほかに候補者になった奨学金の種類によって入学前に必要な準備があります。自分が当てはまるものだけを確かめます。
貸与奨学金:保証人や連絡先を頼む人から承諾をもらう
貸与奨学金では申し込みのときに「人的保証」か「機関保証」を選んでいます。人的保証なら連帯保証人と保証人を1人ずつ、機関保証なら「本人以外の連絡先」を1人お願いします。JASSOは進学前に頼む相手から引き受けることの承諾を確実に得ておくよう案内しています。
- 連帯保証人:本人が返さないとき、本人と同じ責任で全額を返す人
- 保証人:本人と連帯保証人が返さないとき、代わりに返す人(返す額は残りの2分の1まで)
- 本人以外の連絡先:JASSOが本人と連絡を取れないときに、住所や電話番号を問い合わせる人。保証の義務はない
連帯保証人や保証人には選べる人の条件があり、条件に合う人がいない場合や書類がそろわない場合は、進学届を出すときに機関保証へ変えるよう案内されています。機関保証を選ぶと保証料が奨学金から差し引かれます。どちらにするかはしおりの条件と保証料を見て親子で決めます。
給付の自宅外通学:賃貸借契約書の写しなどを用意する
給付奨学金は自宅から通うか、親元を離れて家賃を払って暮らすか(自宅外通学)で月額が変わります。自宅外通学として認められるには、実家から大学までの距離や時間などの条件に当てはまり、証明する書類を出す必要があります。
証明書類の例は本人の名前が契約者か入居者として書かれた賃貸借契約書や入寮証明書です。しおりでは契約者が本人以外だと追加の書類が必要になる場合があるとして、本人名義で契約することをすすめています。部屋の契約が決まったら契約書の写しをすぐ出せるように保管しておきます。
進学届で自宅外通学を選んでも、初めは自宅通学の月額で振り込まれ、自宅外通学と認められたあとで差額がまとめて振り込まれます。自宅外の月額との差額を初めから受け取れる前提にせず、当面の生活費との差額は別に用意しておきます。
入学時特別増額:通知に「国の教育ローンの申込み:必要」とある人だけ
入学時特別増額貸与奨学金は日本政策金融公庫の「国の教育ローン」を受けられない世帯の学生などを対象にした奨学金です。決定通知に「国の教育ローンの申込み:必要」と書かれている人は、保護者などが進学前に国の教育ローンを申し込む必要があります。「不要」と書かれている人は、この申し込みを省けます。
入学時特別増額も振り込まれるのは進学後の最初の振込みのときです。入学前に必要なお金には間に合いません。
初回の振込までの入学金・生活費を用意する
奨学金は進学前には振り込まれません。受験料、入学金、部屋の初期費用など入学前に払うお金は、奨学金とは別に用意する必要があります。
初回の振込みは進学届を出したあと
給付・貸与のどちらも、進学届を出して奨学生に採用されてから振込みが始まります(授業料等減免だけの人は、採用後も奨学金の振込みはありません)。しおりでは、初回の振込月は進学届を出した時期によって違い、振込開始が5月なら4月分とまとめて2か月分が振り込まれると説明しています。振込口座の届け出に誤りがあると、さらに遅れます。
入学してから最初の振込みまでの家賃や生活費も、手元のお金でまかなう前提で考えておきます。学校が案内する初回の振込予定日までの分を見積もり、振込みが遅れた場合の相談先も確かめておきます。給付奨学金の授業料・入学金の減免も、進学後の手続きで行われるもので、入学前に払う入学金にはそのまま使えません。
入学前に払うお金を表にして、足りない分の相談先を決める
入学前のお金は費目ごとに金額と期限を書き出すと足りない額がわかります。
✏️入学前の資金表(例)
| 費目 | 金額 | 払う期限 | 今使えるお金 | 足りないときの相談先 |
|---|---|---|---|---|
| 受験料・受験の交通費と宿泊費 | ||||
| 入学金 | 進学先(支払いを待ってもらえる制度があるか) | |||
| 前期の授業料 | 進学先 | |||
| 部屋の初期費用・引っ越し代 | ||||
| 最初の振込みまでの家賃・生活費 |
JASSOのしおりでは入学前の資金を準備する方法として次のような制度を紹介しています。融資の制度はどれも審査があり、利用できない場合もあります。
- 入学金などの支払いを待ってもらう制度(学校によってある。進学先に確認)
- 国の教育ローン(日本政策金融公庫、保護者向けの有利子の融資)
- 生活福祉資金貸付制度の教育支援資金(市区町村の社会福祉協議会、低所得世帯向けの無利子の貸付)
- 労働金庫の入学時必要資金融資(入学時特別増額の候補者が、奨学金の振込みまでのつなぎとして借りる融資)
融資は借りたお金を返す必要があり、利子がかかるものもあります。条件や金利はそれぞれの窓口で確かめてから決めます。
部屋を借りるときのお金は大学生の一人暮らしの初期費用はいくら?内訳と親が準備する予算、入学前後のまとまった支払いに向けた準備は大学費用の準備は何から?学資保険・貯蓄・NISAの役割とわが家の経験で説明しています。
入学後は、大学の期限で進学届と授業料減免の手続きをする
進学したら大学が指定する期間内に進学届を出すことが最も大事な手続きです。期限は大学ごとに違うので、入学したらすぐに奨学金の窓口や案内を確かめます。
進学届は、決定通知の提出から始まる4つの手順
JASSOの案内では進学後の手続きは次の順番で進みます。
- 進学先の学校に「採用候補者決定通知【提出用】」を出す
- 学校から進学届の入力下書き用紙を受け取り、記入する
- 学校から識別番号(ユーザIDとパスワード)を受け取る
- 学校が指定する期間までに、インターネットで進学届を出す
進学届を入力するときは決定通知【本人保管用】に書かれた「進学届提出用パスワード」も必要です。2027年度に進学する人向けの入力下書き用紙は、2027年3月ごろにJASSOのページに載る予定とされています。
病気など、やむを得ない事情で学校の期限内に出せないときは、すぐに進学先に相談するよう案内されています。
授業料・入学金の減免は、進学先で別に申し込む
給付奨学金の対象になる人は授業料と入学金の減免も受けられます。ただし減免を受けるには、進学届とは別に進学先の学校で手続きが必要です。給付奨学金の採用候補者だからといって自動で減免されるわけではありません。
手続きの方法や時期は学校によって違います。入学手続きのときに進学先で確かめておきます。しおりでは入学後に入学金の減免を申請する場合は入学後3か月以内に申請して認定を受ける必要があると説明しています。先に授業料を全額払ってあとで返金される学校もあれば、はじめから減免される学校もあります。
給付奨学金と授業料減免の制度のしくみは、高等教育の修学支援新制度とは?対象・支援額・申請方法を確認で説明しています。
貸与は、採用後に返還誓約書を出す
貸与奨学金に採用されたら返還誓約書(借用証書)などを進学先が指定する期日までに出します。人的保証を選んだ人は連帯保証人と保証人の署名と必要書類、機関保証を選んだ人は保証依頼書などが必要です。しおりでは正しく整った返還誓約書を期日までに出せないと採用が取り消され、振り込まれた奨学金を全額返すことになると注意しています。
進学先や希望、家計が変わったときの確認先
採用候補者に決まったあとで、進学先や借りたい額、家庭の事情が変わることもあります。何が変わったかによって、進学届で直せるもの、進学後に学校へ申し出るものが分かれます。
進学届で変えられること
令和9年度のしおりでは次のような内容は進学届を出すときに変えられると説明しています。
- 貸与奨学金だけをやめる(一部辞退)
- 貸与の月額、入学時特別増額の額、利率の算定方法、返還方式、保証制度(貸与)
- 生計維持者の変更(申し込み後に離別・死別などがあった場合)
貸与奨学金は卒業後に返すお金です。しおりでも返す負担を考えて必要な最低限の額にするようすすめています。借りる額は進学届の前に親子で見直しておきます。
進学後に学校へ申し出ること
氏名(カナ氏名を含む)の変更は進学届ではできないので、進学届を出す前に進学先の奨学金窓口に申し出ます。給付奨学金だけをやめたい場合は、進学後に学校へ申し出て手続きを確かめます。申し込みのときに生計維持者の申告を誤った場合は、進学届を出さずに進学後に学校へ申し出ます(在学採用での申し込み直しが必要です)。第一種の候補者が第二種も借りたいときのように、奨学金を追加したい場合は、進学後に学校の募集で申し込みます。進学前に追加することはできません。
進学しなかったときや、進学先が変わったとき
進学しなかった場合は辞退の手続きはいりません。進学届を出さなければすべての奨学金を辞退したものとして扱われます。ただし令和9年度中に対象の学校へ進学しなかった場合は、採用候補者の資格を失います。翌年度に進学する場合は、今回の候補者の資格は使えません。予約採用は高校卒業後2年以内なら出身校を通じて申し込めるほか、進学後の在学採用もあるので、出身高校やJASSOの案内で確かめます。
給付奨学金は国などの確認を受けた大学(確認大学等)に進学した場合に支給されます。高校在学中に考えていた大学と違う大学に進む場合も、進学先が対象校かどうかを確かめておきます。
親子のチェックリストとよくある質問
ここまでの準備を時期ごとに「だれが」「どこで」確かめるかの表にまとめました。手続きは本人が行い、親は期限や書類の確認を手伝う形にすると、進学後も本人が困りません。
✅予約採用後のチェックリスト
| 時期 | 対象 | すること | 確認先 |
|---|---|---|---|
| 通知を受け取ったら | 全員 | 奨学金の種類と交付書類コードを確かめ、しおりをダウンロードする | JASSOのホームページ |
| 通知を受け取ったら | 全員 | 決定通知の提出用・本人保管用を保管する | 届かないときは高校 |
| 入学まで | 全員 | 本人名義の使える口座を用意し、カナ氏名と照らし合わせる | JASSOの金融機関の案内 |
| 入学まで | 貸与 | 保証人・連絡先を頼む人から承諾をもらう | しおり |
| 部屋が決まったら | 給付で自宅外通学 | 賃貸借契約書の写しなどを保管する | 進学先 |
| 入学まで | 入学時特別増額で「申込み必要」の人 | 国の教育ローンを申し込む | 日本政策金融公庫 |
| 入学金を払う前 | 全員 | 入学前と最初の振込みまでのお金を用意する | 進学先・各融資の窓口 |
| 入学したら | 全員 | 決定通知(提出用)を出し、進学届を期限までに出す | 進学先 |
| 入学したら | 給付 | 授業料・入学金の減免を申し込む | 進学先 |
| 採用されたら | 貸与 | 返還誓約書などを期日までに出す | 進学先 |
Q. 親の口座に振り込んでもらえますか?
できません。奨学金は本人名義の普通預金(通常貯金)口座に振り込まれます。親名義の口座や貯蓄預金口座は使えません。
Q. 決定通知をなくしてしまいました。
スカラネットから「採用候補者決定通知(簡易版)」を印刷でき、進学後の手続きに使えます。簡易版にも進学届提出用のパスワードが載っています。
Q. 進学届はいつ出せばいいですか?
進学後に、進学先の学校が指定する期間内に出します。入学前には出せません。期間は学校によって違うので入学したらすぐに学校の案内を確かめます。
Q. 奨学金を入学金の支払いに使えますか?
使えません。奨学金の振込みは進学届を出したあとに始まるので、入学前に払う入学金には間に合いません。入学前のお金は別に用意し、足りない場合は進学先や融資の窓口に相談します。
まとめ
予約採用で採用候補者に決まっても手続きはまだ終わっていません。決定通知で奨学金の種類と交付書類コードを確かめ、しおりを読み、入学までに本人名義の口座と、貸与なら保証人などの承諾を準備します。給付の自宅外通学は契約書の写しを、入学時特別増額で指示がある人は国の教育ローンの手続きを進めます。
奨学金は進学前には振り込まれないので入学金や最初の振込みまでの生活費は別に用意します。進学したら、学校が指定する期間内に進学届を出し、給付の人は授業料と入学金の減免も別に申し込みます。期限は学校ごとに違うので入学したらすぐに進学先の案内を確かめます。
この記事で参照した公式情報
2026年10月20日に、次の情報を確認して作成しました。