大学院の修士課程は標準で2年間です。学費・生活費・進学のときの一時的な費用を分けて見積もり、親がどの費用をいつまで援助するかを決めておくと2年間の資金計画が立てやすくなります。
ここでは修士課程の費用の内訳と見積もり方、親の援助の決め方、大学院で使える奨学金や授業料免除の注意点を大学やJASSO(日本学生支援機構)の公式情報をもとにまとめます。
わが家は学部から修士へ、援助の形は変わらなかった
わが家の場合は大学院に進んでも学費の払い方も仕送りも住まいも学部のときと何も変わりませんでした。
部屋はそのまま住み続けたので引っ越しや新しい部屋の契約のお金はかかりませんでした。奨学金や授業料の免除も使っていません。ただし同じ大学の大学院でも入学料はもう一度払いました。学部から続けて進むと「何も変わらない」と感じやすいのですが、わが家では入学のときの費用が改めてかかりました。
わが家の場合は同じ大学・同じ部屋で、本人も早くから大学院を考えていました。違う大学の大学院に進んで引っ越す場合や家計の事情が学部のときと変わっている場合は、同じようにはいきません。次の見出しから家庭ごとに確かめたい費用を順に見ていきます。
修士課程の費用は、学費・生活費・進学時の一時支出に分ける
修士課程の2年間にかかるお金は大学に払う学費、毎月の生活費、進学のときにだけかかる一時的な費用の3つに分けると整理しやすくなります。
大学に払うお金:検定料・入学料・授業料など
大学院の入試を受けるときの検定料と合格したときの入学料、毎年の授業料がかかります。私立大学では施設設備費や実験実習料、諸会費がかかる研究科もあります。金額は大学・研究科・入学年度によって違います。
同じ大学の学部から進む場合に入学料がどうなるかも大学によって違います。早稲田大学理工学術院のように本学出身者の入学金を免除する大学もあれば、わが家のように同じ大学でも入学料を払う大学もあります。
毎月の生活費:自宅か一人暮らしか
一人暮らしを続けるなら家賃や食費などの生活費が2年間(24か月)かかります。学部から同じ部屋に住み続けるなら今の仕送りや直接払いの額を基準にできます。
進学のときの一時的な費用:引っ越しや研究に必要な物
別の大学の大学院に進んで住む場所が変わる場合は引っ越しや新しい部屋の契約のお金もかかります。研究に使うパソコンや本など自分で用意する物があるかも研究科や研究室に確かめます。研究に必要な費用がすべて学生の負担になるわけではないので何を自分で用意するのかを聞いておきます。
大学公式の納付金表から2年間の必要額を見積もる
2年間の必要額は進学先の研究科の納付金表をもとに、入学料と1年目・2年目の学費、24か月分の生活費を足して見積もります。初年度の金額を2倍にするだけでは入学料を二重に数えたり、2年目の金額の違いを見落としたりします。
2年間の必要額=検定料+入学料+(1年目と2年目の授業料・諸費用)+毎月の生活費×24か月+進学時の一時的な費用
国立大学の例:東京大学の修士課程
東京大学の公式の案内(2025年4月更新)では大学院の修士課程の入学料は282,000円、授業料は年535,800円、検定料は30,000円です(選抜の方法によって異なる場合があります)。この金額で2年間の学費を計算すると次のとおりです。
✏️東京大学の修士課程の学費で計算した例
| 費目 | 金額 |
|---|---|
| 検定料 | 30,000円 |
| 入学料 | 282,000円 |
| 授業料(年535,800円×2年) | 1,071,600円 |
| 合計 | 1,383,600円 |
東京大学では令和7年度以降に入学した学部生の授業料は年642,960円です。大学院の修士課程とは金額が違うので学部と同じと思い込まずに大学院の欄を確かめます。国立大学でも授業料や入学料は大学ごとに違うことがあり、この金額がどの国立大学にも当てはまるわけではありません。
私立大学は研究科ごとの納付金表を確かめる
私立大学の大学院は研究科や専攻によって授業料や施設費、実験実習料が大きく違います。早稲田大学理工学術院は2027年度入学者向けの入学金・学費・諸会費を公表していて、本学出身者の入学金は免除、2028年度以降は改定される可能性があるとしています。進学先の大学がこうした表を出しているか、入学年度の分を確かめます。
生活費は、今の仕送りと直接払いを基準にする
学部から同じ部屋に住み続けるなら、今の仕送りの額と親が直接払っている家賃や通信費などを足した金額が毎月の生活費の目安になります。新しく一人暮らしを始めるなら学部生と同じように家賃や食費を見積もります。
生活費の見積もり方は大学生の一人暮らしの生活費と仕送りの平均は?家賃込み・家賃抜きで考えるで説明しています。
親が援助する費目と期間を決める
大学院の費用を親がどこまで出すかに決まった正解はありません。どの費用を、いつまで、いくらまで援助するのかを親の家計と本人の希望から決めておけば、2年間の途中で慌てずにすみます。
援助する費目を分ける
援助の形は家庭によっていろいろです。学部のときと同じように学費も生活費も親が出す家庭もあれば、学費は親が出して生活費の一部は本人が用意する家庭、学費は本人が奨学金でまかなう家庭もあります。
仕送りとして現金を送る分と家賃や通信費のように親が直接払う分は分けて書き出しておきます。合計すると親が毎月どれだけ負担しているかがはっきりします。
期間と上限を本人と確かめる
修士課程は標準で2年間ですが研究の進み具合などで修了が延びることもあります。援助するのは修了までか、延びた場合はどうするか、博士課程に進む場合は改めて相談するのかを、進学の前に本人と話しておきます。
親の老後の資金やほかのきょうだいの学費とのバランスも考えます。無理のない範囲で援助できる上限を本人に伝えておくことが大切です。
研究と就職活動の時間も考えて、アルバイト収入を見込みすぎない
理系の修士課程では研究室での実験や研究に多くの時間を使います。修士1年の後半ごろから就職活動が始まることもあります。アルバイトやTA(ティーチング・アシスタント)などの収入を生活費の当てにするなら、どのくらい働けるかを本人と確かめ、採用が決まっていない収入は見込みに入れないようにします。
家賃や仕送りの送り方は家賃・仕送りを無料で自動送金する方法|条件と設定時の注意点で説明しています。
奨学金・授業料免除は大学院用の案内を確認する
大学院でも奨学金や授業料の免除はありますが学部のときと同じ制度がそのまま使えるわけではありません。大学院向けの案内で条件を確かめます。
JASSOの給付奨学金は大学院では対象外
JASSO(日本学生支援機構)は返済のいらない給付奨学金について、大学院は対象外で申し込めないとしています。学部のときに給付奨学金や授業料の減免(修学支援新制度)を受けていても大学院では続きません。大学独自の給付や民間の奨学金があるかは大学の学生支援の窓口で確かめます。
JASSOの大学院向けの奨学金は貸与で、家計は本人と配偶者で判定
国内の大学院で使えるJASSOの奨学金は、返済が必要な貸与型(第一種・第二種)です。無利子の第一種奨学金の家計の基準は申し込む本人と配偶者の住民税の情報で判定されます。学部のときのように親の収入で判定されるわけではありません。
授業料後払い制度も、あとで返す奨学金
JASSOの授業料後払い制度は、修士課程などの学生が授業料に当たる額を無利子で借り、修了後に所得に応じてJASSOへ返す制度です。授業料が無料になる制度ではありません。支援額には上限があるので、授業料との差額や、本人の口座に振り込まれる場合の大学への納付方法と期限は、進学先で確かめます。
授業料後払い制度は第一種奨学金とは一緒に使えません。授業料に当たる額を大学に振り込むには大学とJASSOの契約が必要で、契約していない大学では本人の口座に振り込まれます。進学先の大学が対象かどうかも確かめておきます。
大学の入学料・授業料免除は、申請と審査がある
大学独自の入学料や授業料の免除は申請して審査を受け、許可されて初めて受けられます。東京大学は限られた予算で行っているため審査の結果が不許可になることがあり、特に入学料の免除は家計の基準を満たしていても許可されるのはごく少数だとしています。申請中に納付を待ってもらえるか、結果が出たあとの支払いの期限はいつかは大学の案内で確かめます。不許可や一部だけの免除になる場合に備えて、資金を準備しておきます。
学部で借りた奨学金は、在学猶予の手続きをする
学部のときにJASSOの奨学金を借りていた場合は大学院に進んだだけでは返還は止まりません。入学後すぐに在学猶予願(在学届)の手続きをして学校の承認を受けると、最短の修了予定まで返還が先送りされます。大学院で第一種・第二種奨学金の採用候補者決定通知を受けた人は、進学届に前の奨学生番号を入力すれば、進学時の在学猶予願の提出は不要です。
学部の奨学金と授業料支援のしくみは大学の奨学金・授業料支援には何がある?給付型・貸与型と減免制度で説明しています。
親子の資金計画表で支払時期と不足額を見る
最後に2年間のお金を親子で一つの表にまとめます。いくらかかるかだけでなく、いつ払うのか、だれが払うのか、まだ決まっていないお金はどれかを分けて書けば足りない時期が見えてきます。
✅大学院2年間の資金計画表
| 費目 | 金額・期間 | 支払いの時期 | 親が払う分 | 本人が払う分 | 未確定・確認先 |
|---|---|---|---|---|---|
| 検定料・入学料 | 実際の額 | 出願・入学手続の期限 | 募集要項 | ||
| 授業料・諸費用 | 年度・前期後期ごと | 納付日 | 研究科の案内 | ||
| 家賃・生活費 | 月額×24か月 | 毎月 | 直接払いと仕送りを分ける | 今の家計 | |
| 引っ越し・必要な物 | 住む場所が変わる場合など | 契約・購入のとき | 見積もり | ||
| 奨学金・免除・収入 | 決まった分と見込みを分ける | 振込・結果が出る時期 | 二重に数えない | 貸与は返済が必要 | 大学・JASSO |
支出の合計が2年間に必要な額です。免除が確定した分と、親と本人が用意できる資金は別に整理して、不足額を確かめます。奨学金を借りて当面の不足を埋めても、修了後に本人が返す分は残ります。
奨学金の振り込みや免除の結果が出るより前に入学料や授業料の納付期限が来ることもあります。その時期にお金が足りるかを表で確かめ、期限を過ぎそうなときは黙って遅らせず大学の窓口に相談します。
大学院の費用に関するよくある質問
Q. 大学院の学費は親が払うものですか?
決まりはありません。学部と同じように親が出す家庭もあれば、本人が奨学金やアルバイトでまかなう家庭もあります。親の家計と本人の希望を合わせて援助する費目と期間を決めます。
Q. 同じ大学の大学院に進めば、入学料はかかりませんか?
大学によります。本学出身者の入学金を免除する大学もあれば、同じ大学でも入学料を払う大学もあります。わが家は同じ大学の大学院でしたが、入学料を払いました。進学先の募集要項で確かめてください。
Q. 大学院でも給付型の奨学金はもらえますか?
JASSOの給付奨学金は大学院では対象外です。国内の大学院で使えるJASSOの奨学金は返済が必要な貸与型です。大学独自の給付や民間の奨学金があるかは大学の窓口で確かめます。
まとめ
大学院の修士課程は標準で2年間です。費用は学費・生活費・進学のときの一時的な費用に分けて、進学先の納付金表をもとに2年間の必要額を見積もります。同じ大学から進んでも入学料がかかることがあり、学部の給付奨学金や修学支援新制度の減免は大学院では対象外です。
わが家は学部から同じ大学の修士課程に進み、学費の払い方も仕送りも住まいも学部のときと変わりませんでした。家庭によって事情は違うので、援助する費目と期間と上限を進学の前に本人と確かめ、資金計画表で支払いの時期を見ておくと見通しが立ちます。
この記事で参照した公式情報
2026年10月13日に、次の情報を確認して作成しました。