母子家庭・父子家庭の大学進学には、都道府県や市などが行う母子父子寡婦福祉資金の「就学支度資金」と「修学資金」があります。入学金などの入学時の費用と、授業料などの在学中の費用にあてられます。
ただしどちらも給付ではなく、あとで返す必要がある貸付です。借りられる額や保証人の条件、申請の時期は住んでいる自治体ごとに決まっています。入学金などを払う前に住んでいる地域の窓口へ相談するのが最初の一歩です。
この記事では国内の大学(学部)に進学する場合に絞って、2つの資金の違いと、相談する前に確認しておきたいことを説明します。自治体の例は横浜市・神戸市・札幌市の公式の案内(2026年11月に確認)から引いていて、すべての地域に当てはまるものではありません。
修学資金と就学支度資金は何が違う?
2つの資金はいつ何に使うお金かで分かれています。入学のときにまとまって出ていく費用は就学支度資金、在学中に毎年かかる費用は修学資金です。
就学支度資金:入学金など入学時の費用
就学支度資金は大学などに入学するときに必要な費用を借りる資金です。神戸市の案内では入学金や、入学時に買う必要がある制服・実習衣などが対象として挙げられています。
修学資金:授業料・教材費・通学費など在学中の費用
修学資金は在学中の授業料や教材費などを借りる資金です。横浜市の案内では授業料・施設費・教材費・実習費・交通費などが対象で、1年分がまとめて振り込まれます。在学中の期間に借りる資金で、横浜市では2年目以降も毎年の継続申請が必要です。
| 費用の例 | 払う時期 | 主にあてる資金 |
|---|---|---|
| 入学金、入学時に買う制服・実習衣など | 入学手続き〜入学時 | 就学支度資金 |
| 授業料、施設費 | 在学中(前期・後期など) | 修学資金 |
| 教材費、実習費、通学の交通費 | 在学中 | 修学資金 |
| 部屋の契約費、毎月の生活費 | 入学前〜在学中 | 対象かどうかを窓口で確認 |
一人暮らしの部屋を借りる費用や毎月の生活費は2つの資金の対象として挙げられていないことがあります。生活費まで借りられる前提で計画を立てず、対象になるかを窓口で確かめてください。
またひとり親家庭であれば誰でも借りられるわけではありません。申請すると審査があり返済できるかどうかなども見られます。必要と認められた額の範囲で貸し付けられるので、限度額まで借りられるとも限りません。
住んでいる地域で、限度額・利子・返済期間を確認する
借りられる額や返し方は住んでいる自治体の最新の案内で確認します。同じ名前の資金でも自治体の案内に載っている金額の例は、学校の種類や通学のしかたなど前提の条件がそろっていません。
限度額は、学校の種類・通学形態・必要な額で変わる
大学の場合の限度額は国公立か私立か、自宅から通うか自宅外から通うかなどで決まります。3つの市の案内では次のように載っていました。
| 自治体 | 就学支度資金(大学) | 修学資金(大学・月額) | 案内に書かれた条件 |
|---|---|---|---|
| 横浜市 | 国公立410,000円 私立580,000円 |
国公立47,000円 私立72,000円 |
通学形態の記載なし |
| 札幌市 | 410,000円 | 71,000円 | 国公立・自宅通学の例 |
| 神戸市 | 590,000円 | 146,000円 | 私立・自宅外通学の例 |
表の金額は上限の例です。実際に借りられるのは進学先の学費などから必要と認められた額までです。後で説明するように、JASSOの奨学金などを受けると借りられる額が減る場合もあります。
無利子でも返す必要がある
こども家庭庁の案内では、母子父子寡婦福祉資金の利子は資金の種類や連帯保証人の有無によって、基本的に無利子か年1.0%とされています。札幌市の案内では修学資金と就学支度資金はどちらも無利子です。
無利子でも借りたお金は返します。返し始めるまでには据置期間(返済を待ってもらえる期間)があり、神戸市の案内では卒業後6か月です。そのあと20年以内に返すことになっています(神戸市・札幌市)。返し方は月ごと・半年ごと・年ごとから選ぶ自治体もあります。
確認するときに聞くこと
窓口では限度額だけでなく次の点もあわせて聞いておくと、借りたあとの見通しが立ちます。
- 進学先の学校の種類と通学形態で、いくらまで借りられるか
- 利子はかかるか(連帯保証人の有無で変わるか)
- 据置期間と返済期間、毎回の返済額の目安
- お金がいつ振り込まれるか(一括か、分けてか)
誰が借りる?借受人と連帯保証人を分けて考える
修学資金と就学支度資金は、親が借りるか、子どもが借りるかで必要な人の条件が変わる自治体があります。誰が返す責任を負うのかを申請の前に親子で確認しておきます。
親が借りる場合と、子どもが借りる場合
横浜市の案内では次のように分かれています。
| 親(母または父)が借りる場合 | 子どもが借りる場合 | |
|---|---|---|
| 借りる人(借受人) | 親 | 子ども |
| 一緒に返す責任を負う人 | 子どもが連帯借受人になる | 不要 |
| 連帯保証人 | 不要 | 保証能力のある人が必要 |
連帯借受人は借受人と一緒に返す責任を負う人です。親が借りる形でも子どもは返済の責任から外れるわけではありません。「保証人がいらない」ことと「子どもに返す責任がない」ことは別です。
ほかの自治体では神戸市が原則として連帯保証人1名を求めています。札幌市は、連帯保証人を立てれば無利子で、立てない場合は資金の種類によって年1%の利子がかかると案内しています(どの資金が対象になるかは案内で確認します)。
保証人を頼む前に考えたいこと
連帯保証人は借りた人が返せなくなったときに代わりに返す責任を負います。横浜市の案内では、連帯保証人に年齢・収入・住んでいる地域などの条件があり、頼める人が限られることもあります。
保証人が見つからないときは親が借りる形にできるか、保証人を立てない場合の条件はどうなるかを窓口で相談します。名前だけ貸してほしいと頼んだり、条件に合わない人を立てたりするのは避けてください。
JASSOの機関保証は、この貸付には使えない
JASSOの貸与型奨学金には保証料を払って保証機関に保証してもらう機関保証があります。これはJASSOの奨学金だけの仕組みで、自治体の母子父子寡婦福祉資金の保証人の代わりにはなりません。それぞれの制度の条件を別に確認します。
JASSOの奨学金の保証制度は奨学金の保証人を頼めないときは?人的保証・機関保証の確認ポイントで説明しています。
入学金に間に合う?払う前に相談する
就学支度資金で入学金を払うつもりなら、入学金を払う前に、間に合うかを窓口で確かめる必要があります。申請から振込までに時間がかかるうえ、すでに払った費用は借りられない自治体があるからです。
すでに払った費用は、対象にならないことがある
横浜市の案内では入学金や授業料をすでに払っている場合は貸付の対象になりません。さらに費用をまだ払っておらず、支払期日まで2か月以上あることも条件になっています。
合格発表から入学金の納付期限までが短い大学では、この条件に当てはまらないこともあります。自分で立て替えて払ってから申請すればいいと考えず、払う前に窓口へ相談します。
申請できる時期と、振込までの時間を確認する
申請できる時期と振込のタイミングも自治体によって違います。
| 自治体 | 申請できる時期 | 振込までの目安 |
|---|---|---|
| 横浜市 | 就学支度資金のみ:3月下旬まで 修学資金のみ:2月上旬以降 両方:2月上旬〜3月下旬 (年度によって前後する。正式な申請は合格発表後で、合格通知書などが必要。事前相談は合格発表前でもできる) |
通常は、月末までに申請書類が届いて貸付が決まれば翌月末に振込。2〜5月は申請のスケジュールが通常と異なる。書類の内容などによってはさらにかかる |
| 神戸市 | 就学支度資金:入学が決まって(合格して)から、入学した月の月末まで | 記載なし(窓口で確認) |
振込までの期間は、相談した日ではなく正式に申請した日から数えます。横浜市では合格発表の前でも事前の相談ができると案内しています。受験の前後で慌てないように、早めに住んでいる地域の窓口へ連絡しておくと安心です。相談では進学先の候補ごとに入学金と前期の授業料の額・納付期限を書き出して持っていくと、間に合うかどうかを具体的に聞けます。
間に合わないときは、ほかの手段も並行して進める
振込が納付期限に間に合わない場合は、ほかの手段も並行して進めます。大学に納付期限を延ばしてもらえないか相談したり、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」を検討したりする方法があります。どれも承認されてはじめて使えるので、一つに頼らず早めに動きます。
入学前のお金が足りないときの相談先は大学の入学金が払えないとき|奨学金の振込前に確認する資金と相談先で説明しています。
JASSOの奨学金や修学支援新制度と一緒に使うとき
母子父子寡婦福祉資金はほかの支援と足し合わせて満額を借りられるとは限りません。JASSOの奨学金や修学支援新制度(授業料などの減免と給付型奨学金)を受けると、借りられる額が減ったり、借りた分の一部を返したりすることがあります。
ほかの支援の分だけ、借りられる額が減ることがある
神戸市の案内では修学資金はJASSOの奨学金や修学支援新制度の減免・給付を受ける場合、限度額からその額を差し引いた額が借りられる上限になります。就学支度資金も修学支援新制度で入学金の減免を受ける場合はその分が差し引かれます。
横浜市の案内ではほかの貸付や奨学金を使える場合はそちらを優先するよう求めています。どちらの例でも使える支援を先に確かめ、それでも足りない分をこの貸付で補う順番になります。
あとで給付や減免が決まると、返す必要が出ることがある
修学支援新制度の減免や給付型奨学金は入学後に正式に決まります。横浜市の案内では、貸付を受けたあとに修学支援新制度の減免や給付を受けた場合、その相当額を給付を受けた日から6か月以内に返す必要があります。給付や入学金の還付を受けたらすぐに連絡することも求めています。
「給付が出たから手元のお金に余裕ができた」と使ってしまうと返すときに困ります。給付や還付の通知が届いたらまず貸付の窓口に連絡して、返す額と期限を確かめてください。
採用や支給額が変わったら、自治体に知らせる
JASSOの奨学金に新しく採用された、給付型の区分が変わったなど、ほかの支援の状況が変わったときも自治体への連絡が必要です。横浜市では奨学金を受けられるようになった場合に貸付の辞退や減額の手続きをするよう案内しています。
修学支援新制度の対象と支援額は高等教育の修学支援新制度とは?対象・支援額・申請方法を確認、奨学金を使って一人暮らしの収支を見積もる方法は奨学金だけで一人暮らしできる?仕送りなしの大学進学で確認することで説明しています。
借りたあとの手続きと返済
修学資金は在学中に続けて借りる資金なので、借りたあとも手続きが続きます。卒業後は返済が始まります。据置期間は返済が免除される期間ではなく、待ってもらっている期間です。
2年目以降は、毎年の継続申請が必要なことがある
横浜市の案内では修学資金を2年目以降も借りるには毎年4月中に継続の申請が必要です。申請を忘れるとその年の分が振り込まれないおそれがあります。進級のたびに手続きの時期と必要な書類を確認しておきます。
返済の方法と、遅れたとき
横浜市では返済は原則として口座からの引き落としで、決められた期限までに払わないと違約金がかかります。子どもが借受人や連帯借受人になっている場合は、卒業後の子ども自身の家計にも関わります。返済が始まる時期と毎回の額を卒業前に親子で確認しておくと安心です。
病気や失業などで返済が難しくなったときはそのままにせず、早めに貸付を受けた窓口へ相談してください。連絡をしないまま滞納が続くと違約金が増えるだけでなく、連帯保証人に請求が行くこともあります。
母子父子寡婦福祉資金の修学資金・就学支度資金に関するよくある質問
Q. 父子家庭でも借りられますか?
借りられます。母子父子寡婦福祉資金は母子家庭だけでなく父子家庭も対象です。ただし借りられるかどうかは審査で決まり、条件は自治体ごとに違います。
Q. 卒業したら返済が免除されることはありますか?
卒業や就職で返済が免除される仕組みではありません。据置期間のあとに返済が始まります。どうしても返済が難しい事情がある場合の扱いは、貸付を受けた自治体の窓口で確認します。
Q. 審査に通らなかったら、どうすればいいですか?
JASSOの奨学金や修学支援新制度、大学独自の授業料減免、国の教育ローンなど、ほかの支援を確認します。入学金の期限が近い場合は大学に納付の相談をすることも並行して進めます。審査に通らなかった理由や条件を変えて申請し直せるかは、窓口で聞いてみてください。
Q. 修学資金で一人暮らしの家賃や生活費も借りられますか?
横浜市や神戸市の案内では修学資金の対象として授業料・教材費・交通費などが挙げられていて、家賃や生活費は挙げられていません。生活費はJASSOの奨学金やアルバイトなどで別に考えておくと計画が立てやすくなります。対象になるかは自治体の窓口で確認します。
相談する前に親子でそろえるチェックリスト
修学資金と就学支度資金は住んでいる地域・進学先・ほかの支援によって借りられる額も時期も変わります。入学金を払う前に、必要な情報をそろえて窓口へ相談するのがいちばんの近道です。
✅相談の前に確認すること
- 住んでいる自治体の担当窓口(市区町村か都道府県か)
- 進学先の候補と、国公立・私立、自宅・自宅外の別
- 入学金・前期の授業料の額と、それぞれの納付期限
- JASSOの奨学金や修学支援新制度の申込み状況・採用の見込み
- 親と子どものどちらが借りるか、連帯保証人を頼めるか
- 申請できる時期と、振込までにかかる時間
- 据置期間・返済期間と、毎回の返済額の目安
- 2年目以降の継続申請の時期
相談先は住んでいる市区町村のひとり親家庭の担当窓口や、都道府県の福祉事務所などです。どこに聞けばよいかわからないときは住んでいる市区町村の子育てや福祉の窓口で案内してもらえます。
この記事で参照した公式情報
2026年11月7日に次の情報を確認して作成しました。